弁理士うめざわブログ

特許事務所の弁理士による、特許事務所業界ブログ

景気動向に関する雑感

この業界の景気の動向を体感的に分かりにくくしているのは、
受任可能な業務量の上限が、マンパワーによって制約されるということです。
例えば10社あって、上位6社が何とかやって行けているとすると、
通常の業界はトップから順に業績の状況に明白な差が出ます。

一方特許業界では、1件はどうやっても1件という状況があるので、
例えば2位の会社と5位の会社で体感的な業績差は感じにくいと思います。
景気の動向を感じやすいのはおそらくその辺のボーダー上にいる事務所でしょうから、
その上に到達してしまった事務所にとっては、自分のとこまで影響を
受けるほどの不況とならない限り、景気の動向を感じることはないでしょう。
あるとしたら、特定の取引先の景気動向に左右されるくらいです。

1ついえるのは、リーマンショックの前まではこの業界は常時好況であり、
就職市場は常に売り手市場でした。弁理士試験制度が変更となり、
弁理士数が増えるとともに知財ブームが起きて業界人口が増えても
まだ好況でしたが、リーマンショックが起きて需要の方が減少する中で
初めて不況というものが体感され、各事務所必死の営業活動がなされました。
たぶんそれまでは、仕事を取るよりも人を確保する方が困難だったと思います。

たぶん今は、リーマンショックの後の不況は乗り越えたものの、
それ以前の状況には程遠いね、というところまでは共通認識として、
その間のどの辺に位置するかが人によって認識が違うのかなと思います。
まあ化学系は電気系よりも景気がよさそうだなあとは思います。
以前は全然逆だったんですが。採用条件も化学系は緩めてますしね。

10人この業界に入ってきたら、昭和の時代は多分全員なんとかなってました。
知財バブルに入って優秀な人が入ってくるようになって
7-8人くらいまでなって、今は5人くらい?数字に根拠はありません。
そして、競争が激化するにつれて採用も厳選が進んでいます。
昔はこの業界いいよと言えたのですが、今はちょっと覚悟が必要と思います。
ダメならくびになりますが、昔はどこか拾ってくれるよと言えたのですが。

で、他人事のような話の後は、独立に関する状況に移りますが、
実感するのは、少し前の人と同じようなことやっても
全然やっていけないなあということです。
昔はみんな何とかなってたようですが、今は業界人口に対して
パイの数が縮小してしまって、これやればなんとかなると思われていたところが結構刈られてしまっています。
それも昔と比べてというより、1年1年厳しくなっている感じです。
早いほうが良かったなと思いますが、それは後発の人から見ても
そう見えるくらいにこれからも厳しくなっていくかなと思います。

独立したての弱小だと依頼する方も不安かなあというのはあります。
そこを乗り越えれば一息つけるかと思うのですが、
そこまでのつなぎがだいぶ縮小していると思うのです。
一番わかりやすいのが受験機関の講師で、一昔前はここで食いつないでいましたが、
今はもう、一部以外とても食えなくなっているのは知っての通りです。
外注業務も発注元が嫌がるのと、競争の激化で減少しているかなと思います。

昭和の時代の独立とは違うのは明らかですが、ほんの数年前と比較しても
開業の時の「とりあえずこれで」という部分が細っていて、
どうやったらあそこにたどり着けるのだろうという不安があります。
そこをうまくやっている人は開業前のビジネスプランがキチンとしている感じです。
要するにベンチャーの立ち上げのようなもので、資格があるから有利
という要素は少ないかと思います。

けもの道を乗り越えた後の人の話を聞いても、一難去ってまた一難のようで、
これが独立なんだなというのを、ここにきて実感しているところです。