新宿西口国際特許事務所の弁理士うめざわブログ

新宿西口で特許出願・商標登録を代理する弁理士による、特許事務所業界と弁理士試験のブログ

オリンピックのエンブレムと商標登録

この辺のネタは完全に乗り遅れたな…と思っていたのですが、
話題が案外長持ちしているようです。そして、知財関連の話題として
展開しているようで、いったいどうなることやら。
どこかのネットのネタではエンブレムの商標の調査登録で
4700万円もかかったらしいです。「4700万 エンブレム」
とかそんな感じで検索するとぞろぞろでてくるので多分正しいでしょう。

うらやましいですね。うちもそんな仕事受けてみたいです。
ただまあそういう仕事は体制側に食い込むのが得意などこかの
大手法律事務所が受任するのが相場なのでしょうね。
いやどこが受任したかなんて知りませんよ。やだなあ。

この手の大いに炎上する話なんてのは法律論とかよりも
得てして下世話な部分が発火点になるものです。
大体あのエンブレム見てこれがベストとは思わないですよね。
あんまりぱっとしない、どうしてこんなのが選ばれたんだと思いきや、
なんか内輪で方や審査員、かたや受賞者でぐるぐる仕事を回しあって
というのが反感を買うのでしょう。
自分だって不透明な過程でどこかの法律事務所がぼったくり価格で
受任したと言えば、何って感じになります。それは人の世の常。
模倣したとか権利があるとか、そんな話は大抵脇役なのです。
そこでまずは著作権はおいといて商標の話だけしてみます。

商標登録出願したのは今年7月のようです。
だからまだ権利にもなってないという話になっていますが、
一応調査がされていて、先願なしと判断されたら基本的には
権利になるという判断になります。
図形ですし、まず拒絶されないでしょう。
海外法制も大体同じ感じです。
また他人の著作権との抵触関係って拒絶理由になってないですよね。
権利の調整規定は商標法にありますが、それは別の話なので、
普通に考えれば商標登録はされるはずです。

ベルギーの劇場が権利持っているとかそんなのも筋違いです。
大体商標権は持ってないでしょうし、属地主義の原則があります。
権利があったとしてどこで侵害したのですか?
エンブレムなんてまだ決まったばっかりなんだから
海外展開なんてまだまだしてないですよね。
ベルギー国内で侵害があれば何か主張すればよいですが。
日本国内のことは日本の法律で裁きます。

損害賠償請求権?どんな損害が発生したのですかね。
そしてその請求権はなんていう権利に立脚するのですか?
ベルギーの劇場はどんな権利を日本で持っていたのでしょうか。
日本の損害賠償請求権は、著作権でも商標権でも、
そのマークを模倣して販売等することで利益を得たときに、
その利益に対して行使するのが原則です。
現時点ノベルティとかそんなのもほとんどないですよね。
その流通による利益の範囲内でしか争うことができないはずです。

ということなので、全面的に模倣があったとしても、
行使できる権利なんてたかが知れているわけで、
あいつらいったい何言ってるんだ、という感が拭えません。

ただですね、外国では商標権を中心に、文句あったら片っ端から
警告しまくるなんて日常茶飯事で、日本はその点のどかです。
日本では、自分の会社名、ブランド名を商標登録することなく、
ブランド展開している会社がやたら多くて大丈夫なんですかね
と思うことしばしばですが、外国では景色がガラッと変わります。

いったん国の外に出ると、もう次から次にケチつけてきますよ。
外国でケーキ屋さんを展開しました。そしたらNYのケーキ屋さんから
警告状が来ました。アパレル展開しようとしたら、
広告を打ち始めた段階から警告状が来ました。
うちでもこういう相談をいくつか受けたりしています。

しかも、商標をよく見たら全然似ていないのです。
こういうのが彼らの行動パターンとしてきわめて日常的なのです。
日本人だから狙い撃ちされたなんて言う人いますが、それは違います。
似ているっぽいなら、とりあえずケチつけますよ。
ましてや日本でもパクリだパクリだと騒いでいるのですから。

あんまり直近の例を出すとよくないので10数年以上前の話でいうと、
スクウェアで「ブシドーブレード」というチャンバラ的な
ゲームが発売ということで、商標登録されました。
そして登録異議申立があったのですが、
何と似ていると言ってきたと思います?
ローラーブレード」に対して混同の恐れがある
という主張をしてきました。
似てないだろそれ。ブシドーブレードのゲームを見て、
ローラーブレードと混同する人いますかね。
もう当時は査定系審理に移行していたので、特にこちらの反論の余地
を待つことなく、あっさり維持決定されましたが、
彼らとしてはその程度でもいくらでも文句をつけてくるのです。

最後に著作権法上の問題ですが、多くで指摘されているように、
類似関係にあるかと、アクセスがあったか、というのが問題です。
この似ているってのが、当業者と世間一般の人とでは
大部基準が違いのではないかなというのが、
クリエイティブの世界の人と接したときに感じるところです。

業界にもよりますが、結局何かを表現しようとすれば、
もう必然的にこうなるってのはあります。
ましてやモノグラムなんて、似たり寄ったりになりますよね。
アルファベット二文字の組み合わせなんて、原則権利は発生しません。
ぱっと見て似ているという初見の感想と、クリエイティブのレベルの人
基準の類否判断が違ってくるというのは当然にありうる話です。

そしてアクセスがあったかというのもまた難しい話で、
その道の第一線の人なら普通に勉強熱心でしょうし、
世の中にいろんなデザインがあるということに
幅広い知見があるというのは基本的には好ましいことのはずですよね。
まああのフランスパンのバッグについては笑う他ないですが…
ベルギーの劇場との類似関係についてはちょっと微妙です。

そこでポイントとなるのが、クリエイティブな世界の人と話した時
の印象として、ある程度のパクリとか、ちょっとしたアイデアレベルの
流用については、表現の幅に限りがある以上、ある程度容認すべき
ものであるとの認識を持っている人が案外多いということです。

ある程度のパクリは発生する、それはお互い様。
そしてその上に本当に良い作品を作れるかどうかが勝負。
そんな感じで、その最終的な表現を模倣となるとそれは
さすがに容認されないと考えているようですが、
じゃあまったく人のアイデア、表現を使えないかというと、
そんなことはないだろうと。

しかしそれは常時ものを見て作っているクリエイター視点であって、
日常的にそれを見ていない立場からすると、初見でぱっと見て
似ている、ああパクリだとそういうことになります。
その点について一般の人との間の温度差というのが生じやすい
傾向はあるのではないかなと思います。

そういう意味で難しい問題を内包しているとは思うのですが、
個人的な感想としては、あのエンブレムは、ださいから却下でOKだし、
体制に取り入って大きな仕事を取り込むような輩も嫌いなので、
もうどんどん追放しちゃって結構です。世の中所詮、好き嫌いです。

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