弁理士うめざわブログ

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PPAP商標登録出願のその後の審査結果

ベストライセンス社により一足先に出願された商標登録出願
PPAPですが、記憶に新しいように、ネットはもちろんテレビでも
取り上げられ、ついにあの上田育弘氏はメジャーな存在として
世間の注目を浴びてしまいました。

U氏へのインタビューもなされ、「ビジネスですから」
などと強気の発言をしていましたが、その後どうなったのでしょうか。
時期的には審査結果が出ている頃ですが、話題になりません。

そういう訳で、jplatpatで「PPAP」と検索してみました。
しかしながら審査結果で出てくる最先の出願人は
エイベックスとなっています。
下の方を見ていくと、後願がベストライセンスになっています。

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(111)登録番号第5954372号
(151)登録日平成29年(2017)6月9日
(210)出願番号商願2016-112676
(220)出願日平成28年(2016)10月14日
商標(検索用)PPAP
(732)権利者  エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社
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出願記事
商標 2017-011509 (平29.2.3) 出願種別(分割(10条1項)) 遡及日(平29.2.3)
原出願記事
関連種別(分割(10条1項)) 商標 出願番号 2016-108551
出願人・代理人記事
出願人 大阪府茨木市 (714011053) ベストライセンス株式会社
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確か、エイベックスによる出願よりも、
ベストライセンス社による商標登録出願が先にされたことで
先取りされてしまう!と問題になったはずです。
しかしながら、ベストライセンス社の出願日は繰り下がって
立場が逆転しました。

なぜベストライセンス社の出願日が繰り下がったのか?
よく見ると、後願のベストライセンス社の出願は、
お得意の分割出願になっています。
原出願は下記の通りとなっており、

(210)【出願番号】商願2016-108551
(220)【出願日】平成28年10月5日
(540)【商標】PPAP
当然と言えば当然なのですが、形式的には分割出願ですが、
先願権が認められず、無事にエイベックスの商標が登録となりました。
原出願は数日とは言え出願日で勝っていたのですが、
分割出願にはその効力は認められませんでした。

分割出願というのは、原出願の内容の一部を、
後の出願日に引き継いで出願することを言います。
ですので、時系列的には、

ベストライセンス原出願
→ エイベックス出願
→ ベストライセンス分割出願

となります。ポイントは、

・ベストライセンスの原出願が消滅した
・分割出願に原出願の効力が引き継がれなかった

という点にあります。

詳細は画像で貼り付けますが、原出願は、
4/7に発送された却下通知が確定して、権利消滅に至っています。
察するに、当初予想された通り、料金不能で
却下処分になったのでしょう。
料金を払っていれば、出願は生きていたはずなので、
それがどういう審査結果になるのか?
は興味津々であったと思われますが、
実体審査に移行することなく終了しています。

原出願がこういう状態ですので、分割出願に
原出願の効力は認められず、出願日が繰り下がった、
ということになります。
そして分割出願が生き残っていますが上記の通り先願権がなく、
エイベックスに普通に負けています。ここから見ても分かる通り、
遅れても一刻も早く出願をする、ということが重要です。

原出願について、話題になった当初はどんな拒絶理由で拒絶されるのか、
弁理士の間で議論になりましたが、
何らかの理由で拒絶されるのは目に見えている訳で、
料金を払って審査に移行するということもしなかったようです。
(通常手続きは出願と同時に納付なので、合法な手続ではありません)

料金不能で出願却下となると、あの強気の発言はなんだったのでしょうか。
エイベックス社も出願から登録まで8カ月程度なので、
特段の遅延も生じることなく、設定登録に至っています。

時期的には旬でも何でもないのですが、ふと気づいたのと、
誰も話題にしていないことから、記事として残しておくことにしました。

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