弁理士うめざわブログ

特許事務所の弁理士による、特許事務所業界ブログ

依頼人はなぜ値下げを要求するのか

特許事務所として大口のクライアントと取引していると
どうしても避けて通れないのが値下げ要求というものです。
値下げ要求はけしからんという話が弁理士会上層部も
含めて、いろんなところで出たりしているようですが、
なぜクライアントは値下げ要求をするのか。
そこには理由があると思われます。

最大の理由は、安い方がいいからです。
当たり前ですね。20万円のパソコンより
10万円のパソコンの方がいいです。
もちろん品質を保つことが前提ですが、
人がやるものですから、「当然品質維持で」
という要求と共に、値下げ要求は行われます。

次に、安くて高品質がよいのは当たり前ですが、
要求される場合とされない場合があるのは
なぜでしょうか。

なぜ要求されるか。要求すれば呑むからです。
要求しても「のめません」と回答したり、
それが品質低下として明確にアウトプットしていく
ようであれば、客側も躊躇します。
代理人側が弱い立場に置かれ、値下げ要求をはねたり、
対抗手段を取れないとみなされるから、
値下げ要求という形になっていくるのです。

うちも値下げを求められることは多いですが、
よほど欲しい案件の場合以外は、常に断っています。
特に特許出願業務で値下げをすることはありません。
「値下げを希望するのであれば、依頼しなくて構いません」
と伝えています。要するにこれだけのことなのです。
値下げ要求に憤るよりもまず、断れない自分に
憤らなければなりません。

まあこれだけのことではあるのですが、
依頼人側がどうしても値下げを希望する場合
というものがあります。まあこの辺の話は
前書いた気がしますが、改めて説明します。

携帯電話の料金なんかが典型ですが、
毎月固定費として発生するものは、
どうしてもコストの大きさが感じられます。
継続的に発生する固定費は、削減しようという
動機づけが働きます。
大体みんなそうなのではないでしょうか。

年間何件とか特許出願をする会社にとっては、
特許取得費用というものはスポットではありません。
年間予算いくらで毎年発生する費用です。
家賃と同様の固定支出なのです。
こういうのは下げたくなりますよね。
皆さん支出削減するときには、
大体固定費から見直していくと思います。

逆に今回限りという支出は、まあ今回はいいや、
という形で大目に見ることが多いと思います。
典型的なものは遊興費ですね。
まあ次は支出を抑えよう、的な。

結局大口のクライアントというのは、
立場的な力関係として値下げをのませやすい側面と、
固定費としての支出の負担感から、
値下げ要求につながりやすいのです。付き合いの長い、
一見さんでない関係だからこそ値下げなのです。

独立してここまで来て思ったのが、スポットの
取引が多い方が、価格決定権はかなり強くなります。
相手に押し負けることが非常に少なくなります。
まあその分効率が悪い、という側面もありますが、
大手でも効率の悪い仕事もあります。
効率良ければその分値下げ圧力も大きくなりますね。

事務所も組織として大きくなると、スポットだけでは
食っていけなくなっていきますので、
そうなると、大口顧客を模索する流れになります。
現状は組織と言えるレベルではないので、
大手との取引は、自分にとっても相手にとっても
得ではない状況です。
やっぱり小規模客メインになっていくなあと
そんな状況になっています。

大手特許事務所なんかだと、最近はどうかわかりませんが、
単価の安いクライアントには新人を当てて、
成長したら単価の高いクライアントに当てたりして、
文句が出たら価格交渉みたいなことを
やっていた時代があったようです。
まあ客に舐められてはいかんということです。
そこのところはしょせん商売ということですから。
黙って高いお金を払ってくれるほど世間は甘くありません。