弁理士うめざわブログ

特許事務所の弁理士による、特許事務所業界ブログ

新ビジネスと新営業手法

独立して6年も過ぎると、新しい展開はないものかと言うことをふっと
頭をよぎったりもします。楽して、というと語弊はありますが、
しんどい思いをして働き続けるとなんかいい策はないものかと考えます。

色々考えると、こういうビジネスをやったらどうかとか、
こうやったら営業できるのではないかというイメージが
湧いてきたりするんですよね。
これまでの年数で顧客の反応を直接受けているものですから、
何を打ち出すのが刺さりやすいのか、そのためにはどんな活動を
していくのが良さそうかってことのイメージは年々高まります。

そんな中でアイデアは出てくるのですが、ありがたいことにお仕事も
普通に発生しています。特段営業しなくてもご依頼を
いただけるのはありがたいのですが、なんか営業して仕事を獲得
したいなあという気分もまた出てきます。
しかしながら依頼を増やす施策というのはまた作業を発生させるもので、
その結果として当然やるべき仕事は増えていきます。
所内整理をしてもっと業務環境を快適にしないといけないですし、
そもそも来ている案件を後回しにすることもあまり良くありません。
そうなるとやっぱり色んなことができないなあとなります。

どんどん拡張していける人は、バイタリティがあってすごいなあと思います。

弁理士、特許技術者、士業はうつでも務まるのか

友人が「うつでも起業で生きていく」という本を出版したのですが、
(下記、アフィはやってません)

www.kawade.co.jpこれを受けて、じゃあ弁理士業務ってうつでもできるの?
という考察をしてみました。

そもそもうつだと何ができないかというと、
どうやら、仕事ができる日とできない日の差が激しいようです。
という意味だと、特許明細書を書く仕事はだいたい従量型報酬
ですので、やれる日に頑張ればよく、やれる日に頑張れる人
であれば、明細書を書き上げればよく、務まりそうな気がします。

この視点で言えば、例えば朝起きれない、普通に会社で働けない、
発達障害だ、とかそういう人にも当てはまり、この仕事は
そういう人でもできるという感じがします。

ただそこで問題なのは、ちゃんと明細書が書けるようになるか、
という修業期間の問題です。この仕事は修業期間をいかに乗り切るか、
というのが一番のネックですので、そこが一番重要になります。

最初は特許事務所で働かなければなりません。
ただ割と朝は自由な職場も多いです。

そして最初は何を書いていいかもわかりません。
ただそれは最初はどんな人も同じです。
手ごろな案件を渡されながら、少しづつ慣れていきます。

ある程度原稿を書きだすと、そこで修正の嵐になります。
そこが結構きついことが多く、うつの人には精神的に
厳しいことも多いかもしれません。
うつでなくても、ここを乗り切るのが一番大変です。

優しい上司ならいいですが、自分は行くとこ行くとこで
それなりに厳しく、「なんでここ間違うんだ」みたいな
詰められ方を何度も受けました。
それが早いとこでも1年、まあ大体3年くらい続きます。
まあここのところが厳しいのですね。

この辺って多分士業全般近いところがあると思いますね。
司法書士でも税理士でも、やっぱり下積み期間があって、
そこを抜けるまでが大変なのだと思います。

しかしそこも相性ですので、合うところで修業を積み、
そこで居心地よければずっと働く、若しくは他で仕事をもらう、
合わなければ合うところで仕事を覚える、
そんな感じの業界になると思います。

仕事さえできるようになればつとまります。
が、それまでが、ですよね。経験重視系の職場の常です。

一人法人の可能化と弁理士法人への名称変更

一人法人が可能になることについてはだいぶ前から話題になっていましたが、
これとともに特許業務法人弁理士法人として登記しなければならない旨の、
弁理士法改正が5/21に公布されています。
まだ公布段階で施行はまだですが、1年以内に施行になります。

一人法人についてはだいぶ前から議論の対象になっていましたので、
ようやくといったところです。業務法人化するにあたり、
弁理士が複数人いないことで困っていた特許事務所もいくつかありました。

勤務弁理士の方には一人法人の話はあまり関係ないのですが、
法人作ると、弁理士としての弁理士会費だけでなく、
業務法人としての弁理士会費も必要になります。
それだけお金払っても必要な理由があるのですね。

1つは法人の方がテナントを借りやすくなります。
今借りてるとこは法人のみなので、法人作ってて良かったです。
あと融資関係も法人の方が良いのではないでしょうか。

大きいのが社会保険で、個人事業主だと国民健康保険
なってしまうのですが、法人の従業員だと健康保険組合に入れます。
設定する収入次第で社会保険料を安く抑えられる訳です。

あと源泉徴収をしなくても良いのですよね。
個人事業主だと源泉分を引いておいて、確定申告の後に
還付を受けるという形になります。
キャッシュフローが繰り下げになるので、その分面倒ですし、
あと確定申告の際に支払調書を集めるという面倒もあります。

あと、代々世襲制の特許事務所だと、あえて法人にしていない
ところもあります。そういうとこだと、今回業務法人化
することにきっかけになりそうですね。

じゃあ弁理士法人を作るかというと、もちろん費用がかさみますし、
現在合同会社を作ってることとの兼ね合いもあります。
人によって有利不利が出てきますね。

一人法人の件については、こういう検討事項が出てきますが、
弁理士法人への名称変更は、今あるとこはただ雑用が発生する
だけですね。ただ資格名と法人名が一致していないのも
他業界の人にとってわかりづらいですし、
他業界への浸透という意味にとって重要かもしれません。

10年後20年後の弁理士業は厳しいのではないか

現在の弁理士業界については景気がいいのか悪いのか、
人と会うことがめっきり減っているのでいまいちわからないものの、
とりあえず食えているような感じは受けるのですが、
これからはどうなってくのかなということを考えてみました。
10年後、20年後というスパンの話です。

なんでこういうことを考えたかというと、今少子高齢化
その結果として人口減少が進んできています。
将来的な産業構造はどうなっていくのか。

人口が減少していくとお先真っ暗化というと
そんなことないと思うんですよね。
単にスケールが小さくなるだけで、需要は減るけど
競合も減ります。豊かさは1人当たりの経済力なので、
1人当たりの生産力が減らなければ、
個人個人が貧しくなることもなかろうと思います。

人口が半分で需要も半分なら供給も半分、という業界は
多分人口が減少してもそんなに変わりません。

一方、スケールに依存する産業は厳しいと思うのですよね。
例えばテレビ産業とか、娯楽関係、メディア系、
その他国内需要のスケールに依存する産業は、
スケールが小さくなればその分実入りも減ります。
これに該当する産業は細っていく感はあります。

つまり、スケールに単純比例ではなく、
もっと乗数効果がかかっていて、例えばGDPが1.5倍なら
出願件数は2倍、GDPが2/3なら半分くらいに
傾斜がかかっている感じの商売は厳しいですよね。

ということを考えたとき、弁理士業ってのは
結構厳しいと思うのです。
国内特許を取得するコストは、GDPが2倍でも半分でも同じです。
売り上げのスケールに依存して特許を取るかどうかが決まります。
売り上げが損益分岐点を下回れば特許を取らない、
という判断になるでしょう。

例えば逆に中国なんかはGDPがぐんぐん伸びてきたので、
中国で特許を取ろうという判断が、昔はなかったところ、
今では中国を主要国として判断していますよね。
知財ってのはスケール依存産業なのです。

あともう1つ、弁理士の年齢分布が、30代後半から50代前半
あたりにかなり偏っているのですよね。
人口分布で言うと70前後に大きな山があるはずで、
しかも士業は70歳くらいでもやっているような仕事のはずです。
何が言いたいかというとはけていく人数が少ない。
仕事の供給は減っていく割に、シェアしていく人数は変わりません。

ほかの業種はどうかというと、司法書士とか税理士の場合、
人口が半分なら会社の数も半分で、
司法書士、税理士の数も半分になればつり合いが取れます。
また、人口分布通りに70前後に大きな山があります。
つまり、高齢者世代がきちんとはけていきますので、
業界の景気的には今とそこまで変わらないのではないか、
ということを予測しています。

暗い予測をしてしまいましたが、長いスパンの話であり、
来年再来年こうなるという話ではありません。
我々はこれから業界の椅子取りゲームで生き残らなければ
ならないという予測になります。

人口減少自体はもう確定事項で、よほど移民を取るとか
しなければ覆ることはありません。
ただ、この人口が減少する未来においてどう世の中が
変化していくのかについて、あまりこれといった予測が
見つからないので、自分なりに予測してみることにしました。

特許事務所への依頼と内製化の今後について

とある関西の大手企業が、特許出願を内製化する方針である
という噂を耳にしました。
内製化については、いろんな企業が試みつつも、結局挫折、
を繰り返しつつ今に至っております。
特許事務所への依頼費用は単純にコストであり、
そこに手を付けたいというのは昔から検討されてきました。

ただ特許出願の依頼件数が多い企業というのはとかく多忙なわけです。
単に権利化だけとっても、一般の企業と比べて企業サイドで
主導権を取って行うことが多いです。
発明のアイデア出しから提案原稿の作成、特許調査、
クレームのたたき台、中間処理の基本的な方針まで
知財部でやってしまう会社は多いでしょう。

そしてその分依頼費用は抑え込んでいる訳ですが、
もうここまでやっているのだから、特許事務所に出す意味あるのか、
ってとこまでなることは本当に昔から多いようです。
それが挫折するのは、やっぱり忙しいからということと、
重要案件は丁寧にやっても、それほどでもない案件は、
特許事務所で適当にやってね、という
塩梅にすることも少なくないでしょう。

景気動向が昔と何ら変わることがないのであれば、
特許事務所側としては内製化の動向を恐れる必要はないでしょう。
しかし昨今、電機メーカーの国際競争力はだいぶ下がったように
思われます。売上規模が縮小していくのであれば、
特許出願はそれに比例して減っていくでしょう。
それだけでも業界の仕事量は減っていくわけですが、
案件総量が減れば必然的に知財部員の仕事も減る訳で、
いずれそのあいた手間で何かやらないか、
という流れになってもおかしくありません。

こういう中から、電機分野における特許出願の長期的な依頼件数は
全体としては減ってくるものと思われます。もちろん数字としては
既に減っているのですが、減少は加速するでしょう。

特にこれから少子化が加速し、生産年齢人口も大きく減っていくと
日本の経済力は弱まります。そして特許出願件数は、
経済力とほぼ比例いたします。
やっぱり厳しい状況になっていくことが予測されますね。

ただ生産年齢人口が減るということは、
知財人口自体これから減ってく訳です。
依頼も減りますが、マンパワーも減る訳で、
業界全体としてどうバランスしていくのか読めません。