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poisonous divisional、欧州特許出願の優先権が消滅する分割出願

釣りっぽい記事ばかりになってきたので、少しは硬派な記事も。
この秋には欧米の代理人が多く日本に足を運び、
法改正関係のレクチャーをやったりしながら親交を深めに来ました。

欧州特許については、法律そのものの改正と言う点では、
分割出願の24ヶ月の縛りを解消した点と、
サーチ手数料の追加納付の件がありますが、
実務的に重要な話ではないと思います。
欧州統一特許と統一裁判所については決まれば影響は大きいですが、
まだまだ先の話になりそうです。

そんな中で、poisonous divisionalについても解説を受けました。
これが解説を受けても少し分かりづらかったので
一応書いてみることにしました。
詳細な話はもっと信頼性の高いソースに当たったほうが良いので、
ここではざっくりの話をします。

 

まず原出願xがあります。発明の主題はa1であるとします。
これについて優先権を主張し、発明の主題a2を追加しました。
そしてクレームにa1とa2の上位概念として、Aを書きました。
その特許出願をyとします。
そしてyについて分割出願zをしました。
分割出願zは、とりあえず狭い権利をということで、
権利範囲をa1としています。

状況はこんなとこですが、さて出願yの権利範囲Aについては
遡及効(補足:優先権の利益)が認められますか?というと、否、という判決。
分割出願zをしたことで、これは出願yとは異なる客体、
a1はzに帰属するので、yにはa2しか残らず、
a2は後の出願で加わったものだから、優先権は認められない、
そういう判決です。

しかもこの判例ではxもyも(そしてzも)EP出願です。
主題a1については原出願日基準で開示され、
その一方で出願yは遡及効(補足:優先権の利益)が認められないので、
後の出願日基準となります。
つまりa1についてのxに基づく開示により、
a1を範囲に含むAを権利範囲とするyは後願となり
自己衝突(セルフコリジョン)により権利無効という判決です。

日本で言えば人口乳首事件みたいな感じですか。
まあ本当にこのままいくのかなという感じはありますが、
とりあえずこれが欧州関係では一番ホットな感じはあります。

だだだっと書いたので分かりにくいとは思いますが、
原典をたどりながら正確な情報を得たほうが良いと思います。
一応聞いたことを聞いたまま書いた感じです。

分割により毒が内包されると言うことでpoisonousということ
らしいですが、外人はpoison好きですね。poison pillとか。
言いたいこともいえないこんな世の中ですね。