弁理士うめざわブログ

特許事務所の弁理士による、特許事務所業界ブログ

独立後の特許事務所は、仕事が来れば直ちに儲かるというものではない

まあ前回の話の繰り返しなのですが、弁理士として独立した後は、
「仕事が来るか?来ないか?」が最大の関心事のようです。
それはまあ確かにそうです。仕事を集めてくるというのが
独立開業のハードルの第一歩であり、
そこを軌道に乗せないと生活費を稼ぐことができません。

なので、仕事が来れば直ちにウハウハと思っている人が
あまりに多いようなのですが、そんなことはありません。
収益につなげるにはもう1ステップ必要です。

例えば自分は独立して最初にやったのは商標の
出願とか中間処理だったのですが、
1人でやって正確にやる、という部分の
負担の大きさというのは、大きな組織を
やめてみないと分からないでしょう。

勤務の方は、ほとんどが実体業務だけに特化して
いるかと思います。願書をつくることは
案外やっていない人が多いようですし、
自分である程度作ったとしても、
誰かがチェックしてくれます。

あとまあ大手企業の仕事を受けている限りにおいては、
発明者氏名以外は記載事項は全部同じです。
発明者居所ですら同じになります。
ここで間違いようがありません。
大口の業務のよいところは、こういうところで
定型化しやすいところですね。
けど弊所のような小規模事務所では
そういう仕事は扱っていません。

お客様の依頼内容を確認して、内容をチェックして、
正確に手続きをして、請求書を切り、発送する。
最初はそれだけで1日つぶしていたのです。
そんなんで儲かる訳がありません。

それでも最初の頃は依頼数も多くありません。
少ない業務をじっくりやって間違いなく
処理を進めていきました。
また、お客様への価格交渉力も高くありません。
安く受けて効率的でない仕事をしていたのです。
これでは依頼を集めることができても
儲かることはありません。

ある程度忙しくなってきたところで、
手早く進めようとしたら、確認が疎かになって
ミスをしました。
もう今だから振り返れますが、とにかく憂鬱ですね。
リカバーのできる処理だから何とかなりましたが、
リカバリー自体がすでに非定型業務なわけです。
そのこと自体がすでに慣れません。

会計処理だって試行錯誤です。
いろいろ調べて、これで本当にいいんだろうなあ
とか思いながら進めていきます。
税務署も特に何か言ってくるわけでもありません。

何処かで慣れることで、効率化されて利益率を
向上させられるのだろうなあと思うのですが、
自分はずっと慣れなかったですね。
自分はどうやって改善したかというと、
スタッフを採用してからです。
彼女は色んなことに対して経験があったので、
うまくこなしてくれて、ここで初めて
収益面でも目処が立つようになった訳です。

まあ自分は独立前から、最初の採用を完結するまでで
ようやく一段落と思っていましたから、
そこに向けて少しずつ進めていったのですが、
仕事が来ればもうそれでオッケーと思っていたら、
やっぱりそれは先行きが多難ではないかと思います。

自分の独立について話をするとき、営業だけがすべて
と思っている方が、あまりに多いなあと思うのですが、
先の投稿にも書いたように、営業とは、お客様に対して、
発注するに相当する安心感があることを示すことです。
一番最初の見積依頼は、色々あたふたしてしまったので、
受注にはなりませんでした。
見積もりをしてくださったのは、もともとの知人
でしたが、それでも不安に思われたら受任できません。

独立当初の軌道に乗る前は、我ながら本当に
この人大丈夫かという状況だったわけです。
それを消していくのが営業活動なのですね。
そしてそのことを広く伝える活動になります。
最終的に選ぶのはお客様ですから。

その上で儲けようとしたら効率化という面は
避けられません。価格は相場というものがあります。
効率化と、品質及び正確さをどう両立するかも
業務努力になります。
それは単に実体実務経験がありますだけで
補えるものではありません。

その辺の念頭にある部分が、独立している人
同士だとある程度分かりあえるのですが、
勤務している相手だと、根本的に伝わっていない
部分が多かったりします。
まあそもそもの部分で業務オペレーションを
軽視する人は世の中結構多いですしね。

まあ仕事が来るようになってから先が長いです。
営業だけがすべてでもない点は強調しておきます。