弁理士うめざわブログ

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ユニクロ・セルフレジ特許訴訟

上記の内容がトレンドになってきましたので、ちょっと記事を書いてみます。

訴訟の経緯はここにかいてあるようなので、抜粋してみると、

diamond.jp

ユニクロにセルフレジ、設置されていますよね。
これを一時取引関係があった株式会社アスタリスクという会社が
特許を保有していて、製品もコンペに出したところ、
他社製品を採用されてしまったという経緯があるようです。
特許出願中であることは告げていたようです。

特許は成立し、ユニクロはセルフレジを継続、
特許侵害訴訟に踏み切ると一方で、ユニクロ側は特許無効審判を提起した、
という流れです。

該当する特許はこちらです。

メンテナンス情報 (Maintenance information) | J-PlatPat/AIPN

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、
前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、
前記アンテナを収容し、前記物品を囲み、該物品よりも広い開口が上向きに形成されたシールド部と、
を備え、
前記シールド部が上向きに開口した状態で、前記RFタグから情報を読み取ることを特徴とする読取装置。
【請求項2】
前記アンテナよりも前記開口側に配されて、前記物品が載置される載置部を備えた請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記シールド部は、
前記電波を吸収する電波吸収層と、
前記電波吸収層の外側に形成され、前記電波を反射させる電波反射層と、
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の読取装置。


請求項1と2が無効になって、請求項3が残ったようです。

特許そのものや訴訟の経緯よりも、ユニクロという会社の内情について
公開情報から調べてみます。

まずjplatpatで「ファーストリテイリング」で検索してみます。
特許・実用新案の合計で31件です。会社の規模を考えると少ないですね。
2014年から急に特許出願件数を伸ばし始めたようです。

弁理士数を調べてみたところ、弁理士は2人です。なお1人は知っています。
対応に追われて大変ですね。


話を戻しますが、ざっと見て、権利範囲が広く、
それでいてクレーム数が4(請求項4はシステムクレームなので省きました)
と少ないので、無効審判でつぶせると判断したのでしょうか。

最終的に当初より求めてきたライセンス料の支払いで妥結すると思われます。
ただ、気になるのが、


記事中、

しかし、ファストリ側には「この特許は金を払うに値しない」と一蹴されたという。

とある点です。

こういうありきたりな権利範囲の特許について、こういうことを言う事業者、
多いんですよ。

こんな当たり前の話に特許料なんか支払いたくない、こう言うんです。

そういう形で相談を受けたことは独立してからいくつかありますが、
その話をまとめて思い返すと、特許制度に対する敬意がない感じがあるのです。
こんなのあたりまえだから、何とか特許を使用しないようにできないか、
こういう話です。異議申し立てや無効審判をかけるならまだいい方で、
そんなことにお金を払いたくない、という話になることも多いです。

無効資料を探すのは良いですが、完全につぶしきれない時点で
もうちょっと対応というものがある感じがありますが、
会社の上下関係を垣間見て、そこも含めて微妙な印象があります。