33歳川崎市内のメーカー勤務、MARCH理工学部修士卒、年収はようやく600万円を超えた。なかなかこれと行って出会いもないので婚活を始めようと思う。これまで恋愛経験はないのだけど、婚活スペック的にはそこそこいけてるはずだし、何よりも真面目で温厚な自分。婚活をしたら引きはあるはずだ。
マッチングアプリはどうやら男性不利なようだし、どうも合う気がしないので、結婚相談所に登録しようと思う。コスパの悪いことは避けて貯金はしてきた。婚活費用は十分にある。車はコスパが悪いので持たない。その分だけ株式に投資をして着々と増やしてきた。
さてまずは話を聞いてみようと都内の結婚相談所まで足を運ぶことにした。すぐにでも結婚したいのはやまやまだけど、これまでの女性関係で嫌な思いもしてきた。自分は正直モテる方ではないと思う。しかし経済力には自信がある。自分をお金目当て、ATMとして見るような女性はなんとしても避けたい。
結婚相談所は入り口がキラキラしていて気後れがしながら待っていたところ、奥から熟年のお見合いおばさんがやって来た。服装は妙にごてごてしていて、満面の不自然な笑顔で迎えてくれた。いらっしゃい、結婚っていいものよお~。あなたならすぐ結婚できるから任せてちょうだい。苦手なテンション
色々説明を受け、内容は分かったような分からないような感じではあるけど、おばさんのすごい勢いに押されて入会することになった。とは言え、色んな証明書類は必要だし、写真もとらないといけない。その辺お見合いパーティやマッチングアプリと違って面倒
色々もたもたしてるうちに1ヶ月もかかってしまったけど、写真も撮り終え、ようやく登録になった。お見合いと言っても仲人に具体的に誰か紹介してもらうわけではなく、オンライン上でマッチングして相手を決めていくようで、形式的にはマッチングアプリである。でもその方が気は楽。
登録直後は入会バブルと言って多数の申し込みが来るらしい。そしてその中から決めないと婚活は長引くと脅された。だからと言ってあまりに妥協した相手は選びたくないけど、このチャンスは生かしたい。そう思って申し受けを待つ。
入会バブルと言うから期待してたのに申し受けは8件。こんなもんかと気落ちしたが仲人さんは男は自分から申し込んでなんぼと言った。何はともあれこのうちから3人と会ってみようと思う。
初めてのお見合いは29歳事務職年収未記入、趣味はカフェや美術館、神社めぐり、顔は割りとよさげに見える。背景に観葉植物が置いてあり、白のワンピースで撮影された写真。鬼滅の刃が面白かったと書いてるけど自分は見てない。お見合いは新宿京王プラザホテルのラウンジに土曜の昼。早めに行かないと
お見合いのメッカなので早めに着くようにしたのだけどすでに長蛇の列。お見合いはスーツ指定、料金は男性が出すルール。プロフィールを読み込みながら相手を待つ。早めに着いたはずなのに待ち合わせ時間ちょうどに案内されると共に相手らしき人の姿が
そこに立っている女性は写真の人と似ているようだけど老けた顔をしている気がする。この人だったらすごく残念でこのまま回れ右して帰りたい気がするのだけど、人を探している様子。やはり自分の相手かと思ったところ、他の人と挨拶していた。別人で良かった。
すると後ろから、上田さん(主人公)ですか?という声がしたので振り返ると、写真の顔と似て非なる遠からず近からず、いずれにしても期待にはやや達しない見た目の女性が声をかけてきた。ブランドは詳しくないが、高そうだけど似合わない服を着て、いつもは芋っぽいのだろうなという女性がそこにいた。
はじめまして、よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
期待と不安と、それなりの妥協感の入り交じった満面とまでは言えない笑顔を浮かべつつ、まずはお互い見つけることはできた安心感の中挨拶を交わす。席につき、私はコーヒー、相手は紅茶を注文。ロイヤルミルクティではない。まずは合格
会話は概ね和やかに進み、お互いの趣味や仕事のことなどを、それとなく無難に意見交換していったが、もちろん盛り上がるはずもなく、20分もしたところでネタはつき、気まずい時間が流れる。相手は何も話題を提供する雰囲気もなく同じように困っている。車の話をしてみた。結婚後はマイカー欲しいと
車なんて都心では使わないのに誰がお金を出すつもりなのか。そう思うと彼女の金遣いが急に気になり出した。好きな食べ物なんかも聞いてみたらなんか高いのが好きそうだ。間違ってもサイゼリヤなんかいかなさそうだ。会話も受け身で自分から話を振ってくれない。そんなことを思いつつお見合いは進む
そうこうしながらギクシャクしたお見合いは大体一時間が目安と言われる1時間立とうとしており、時計をチラチラ見ながら適当に話題をつなぐ。こういうのがなんかつかれるけど、諦めたらそこで試合終了ですよと言う安西先生の言葉が心に響く。大体向こうもそろそろおわらないかなと思いながら臨んでる
時間が来たのを見計らって会話を途切れさせる。お名残惜しいですが、という取って付けたような雰囲気と共に、そろそろですかね、と告げる。相手も察してええ、と言い、お見合いは終わる。ルール通り代金2500円は自分が払う。相手はご馳走さまです、とお礼をいい解散。お見合いデビューが終わる。
家に帰る。この人にOKを出して相手からOKが来たら仮交際と言うのがスタートすることになる。この人と結婚したいかというと正直微妙だ。顔が期待したほどではない割に、なんか金銭感覚が荒そうだし、会話もこちらが頑張って盛り上げるのに疲れるだけで受け身だ。けど交際してから考えろとも言われる。
結局お断りにした。理由は「フィーリングが合いません。もっと相性が合う人がいると思います」そう書いて送ろうとしたところ、向こうから回答が来た。お断りの返事が来た。理由はあまり楽しくなかったと。冗談はその盛り過ぎの写真だけにしろ。お前と一緒で楽しい奴いるのかと思ったけど次の人に期待
さてお見合いは残り2人。2人とも仮交際になる可能性は低いことから少しずつこちらからも申し込みをしていく。申し受けではないがなんか推薦みたいな欄がある(注:お気に入り登録というのがあり、自分をお気に入り登録した方が表示される)その中からとりあえず会ってみたい顔の人を数人ポチポチ押す
さて翌日日曜は別の方とのお見合い。正直こちらがとても楽しみ。なんと言っても写真を見る限り、某女子アナを彷彿させる風貌に胸は高鳴る。やはり美人と会うのはテンションが上がる。料理もとても得意と書かれており、仕事もとてもやりがいを持ってそうな印象がある。
当日、お見合い相手と会う。第一印象は、君なんか写真と違わない?で、もちろんそこに女子アナはいなかった。撮影修正技術の進展に驚かされると共に、そんな技術の成果をここでは見たくなかった。そこは僕もいい社会人、狼狽を隠しながら会えて嬉しかったという態度と表情を無理して出しつつ迎える。
一方のお相手、気のせいならよいが、なんか上から目線で品定めでもするように見ているような気がする。
何はともあれ席に案内する。そして注文。自分は「コーヒーで」相手は「ロイヤルミルクティで」
繰り出されるジャブに翻弄されるが、それは嵐の幕開けに過ぎなかった。
趣味、仕事、旅行の話など話題を色々変えてみるが、会話が転がらない。大体相手の女性はずっと不機嫌そうだ。何か取っ掛かりがあれば突破口にできるのにと焦る中、うっかり口走った言葉が予想外の展開を招く。
「そういえばお写真中々素敵ですね」
自覚はあったようで思わぬ反撃が返ってくる。
「いい感じの写真にしてもらったんですが、お会いしてみてもしかして残念でしたか?」
お相手のひきつる笑顔。冗談混じりに言ってる風には感じられない。
「それでしたらあなたももう少し髪型とかネクタイとか、あと靴も。身だしなみというのがあるのではないですか?」
止まる雰囲気はない。
何かが壊れたように延々とぶつけられてこちらは「はい、すいません」というばかりで、一区切りした時点でお開きになった。手土産を持ってくと印象がいいとのことで用意したお菓子はそのまま持って帰って自分で食べ、当然のようにお断りの返事を出した。
一方で申し込んだお見合いはいくつか成立していた。申し受けは少なかったが、申し込みに対する反応はそれほど悪くないらしい。
色んな人がいるなと思いを馳せながら、もう少し自分の身だしなみはきちんとしないといけないことを反省した。
結婚するのは一人なのだからへこたれずに色んな人に会う。