弁理士うめざわブログ

特許事務所の弁理士による、特許事務所業界ブログ

大手特許事務所と中小特許事務所、その違いと勘違い

今週も大雪の中、もはや仕事ではないようですが
皆さんいかがお過ごしでしょうか。
こんな日なので私はブログでも書いてみます。

今まで応募者視点の記事ばかり書いてきたので、
たまには発注者視点の記事でも書いてみたいのですが、
簡単にだけ応募者視点の違いを先に触れます。

零細特許事務所がなぜ零細なのかと言うと、
・そもそも拡大の意欲がない
・人材を定着させる力がない
このどちらかに該当します。

拡大の意欲がないなら求人なんて打たないわけで、
たいていの場合は、人が入っても辞めてしまうというのが実情です。
個人商店のアナーキズムがそこにはある訳で
非常にリスキーなケースが多いとは思います。

一定以上の規模になるともう大きかろうが大きくなかろうが
そんなに差はないと思います。
「色んな仕事」は小さい事務所ほどあるような気がしますし、
いまどき外国案件の受任に規模の大小はほとんど関係ありません。
なぜ規模が違うのかは後述しますが、働く側のメリットに
なるような話はほとんどないように思います。
あえて言うと超大手は例外なく薄給激務ですね。
人事制度を工夫して辞めると損、な風に見せて定着させています。
なんのことはない一般企業のサラリーマンと何も変わりません。

さて本題の、発注視点から見た大手と中小の違いです。
大手企業は発注の条件として、一定規模以上の特許事務所
であることを求めています。弁理士何人、スタッフ何人ですね。
昔はそんな要件なかったんですが、組織の安定性の観点から
見直すようになってきたようです。
これが理由で1人弁理士を発注先から大幅排除した
某大手企業がありますね。その結果その特許事務所は
規模としては小さくなかったのですが倒産してしまいました。
この業界で言うソニーショックですか。おっと口が滑った。
まあ大手企業はどこも個人事務所に出さないといってます。

一方大手特許事務所からすると、なんでそんなに人集めるのか。
弁理士の仕事なんて属人性が高いのだから
大規模化の意味なんてありません。
特殊業務が発生したらそれを得意とする人につなげばよい。

なぜ大規模化するかというと、大手企業からの
大量発注に備えるためです。
月に100件出願する企業からすると、それを細切れにして
何十もの特許事務所に発注とかわずらわしいだけです。
また納品発注システムも独自に設けていたりするので
大勢の人を集めて説明するより最低限の人に説明して
あとよろしくというほうが楽です。
価格表だって変えたらいちいち説明が必要です。
そういう大企業からの要望を受け止めるために大規模化している
というのが主な理由であると思われます。

一方、月20件くらいかける特許事務所がそのキャパを
1社に全部振り分けるなんてことはなるだけ避けたいです。
そういうクライアントを数社持つのが一番経営を安定させるので
これに備えられるだけの人員を確保すると言うのが
特許事務所側の大規模化の最大の理由です。

そういう意味で大手特許事務所からすると
零細企業のクライアントなんてごみみたいなもんで
「なんかこんなのきちゃったよ」
「そこの新人、俺忙しいからこれ適当にやっといてよ」
こんな扱いです。当然報酬は満額です。
大手証券会社と個人投資家の関係ですね。
知り合いが、あの特許事務所、定期的に発注してるのに
正月の挨拶にも来ないとかぼやいてましたが
どうも某超大手特許事務所だった模様。
そりゃ来るわけありません。

じゃあ中小特許事務所はというとなんかまちまちなんですよね。
大企業相手がベースになっているようなとこだと
大手特許事務所と何ら変わりはないでしょうか。
常時採用しているようなとこだとそんな感じですか。

ところで中小企業は、通常は年間に依頼件数が多くありません。
単発は普通で、あとは年に1件とか。
月に1件もあれば相当ですね。
こういうところをメイン顧客にしていると
大規模化はメリットよりデメリットなんですね。
クライアント層をポートフォリオ化しようにも、
食える程度に客集めたらその時点でポートフォリオ化してます。
案件受任が定期的というわけではないので
採用した人食わせていけるのか不安です。
必然的に相応の規模に落ち着きます。
なので中小企業と、中小特許事務所は、
こちらもまた相性がいいということになります。

こうやって追っていくと事務所ごとに違いが出てきますね。
はっきりいえるのは規模の大小と専門性に関係はありません。
大きくても仕事は個人プレイだったりとか
小さくても妙にシステム化されてたりとか。
大手の方が仕事の幅が限定されて同じことの繰り返しと思いきや
同じようなことをやっている零細事務所もあります。
実情を追ってくと先入観とはずれも出てきますね。