特許事務所の事業承継の話まとめ
特許事務所の事業承継の話について2回ほど前置きの話を書いた段階で
すっかり間を空けてしまいました。前回書いてから2ヶ月くらい
たちました。その続きをようやく書きたいと思います。
特許事務所の事業承継については、結局承継元の年配の弁理士の方が
この人と思う人に譲ろうと決心することが一番大事で、
そのための条件としては金銭面は大して重要ではないと言うのが
前回までの話のまとめです。
金銭の話が世に出回りやすいのは第三者としてそれが納得しやすい
からであって、多分それは本質的ではないはずです。
事務所がある程度の規模になって、複数の後継者候補がいる場合には
その中から天秤にかけるためにお金の話が出るんだと思います。
天秤にかける複数の候補がいないことが実際は多いと思われ、
その場合は「この人」をどうやって決めるかということです。
結論から言うと、一番多いのは人の好き嫌いだと思います。
なぜか雇われる側は一番優秀な人が後継者として選ばれると
考えがちですが、実際はそうではありません。
もちろんそういう建前は崩さないでしょうが、
得てして優秀な人というのはオーナーとぶつかったりするものです。
優秀である以上自分に自信があることが多いですからね。
優秀でもあまり好きではないなと思ったら選ばないでしょう。
そして経営権を委譲するにあたり、信用できる相手かと言う点です。
ここで世間一般で考えて信用できるかどうかではありません。
本人の主観で考えて信用できるかどうかです。
客観的に信用できる人は、事務所の将来のことを考えて、
必要とあれば苦言も呈するような人ですが、
年取って自分の能力に自信も落ちつつあるような人は、
そういうことをいうような人は疎ましく思ってしまいます。
「年よりの相手を適切にできる人」が該当するのかもしれません。
実務能力はその次なのかなあとそんな気がします。
大体実務能力を客観的基準で測るというのもなかなか困難です。
年取ってくると偏屈になってきたりしますし、
もともと昔の弁理士の能力って微妙ですよね。
淘汰もなく、資格さえ取ってしまえば誰でも荒稼ぎできた時代です。
しかも今のような脚光を浴びる世界でなく、落ちこぼれが
一発逆転を目指す世界です。そして判定基準はレジュメの再現能力。
複数人の評価でなく、自分のみの評価となるとどれだけ適切に
ものを見れるかは謎です。しかも本音のところは俺の方がと
思ってたりしてなかなか面倒です。
誰かの経営権の委譲を受けると言うのは、こういう年寄りの方に
これでよしと思ってもらうことが必要となる訳で、
これはこれで大変です。零細事務所の後継者となると、
人とうまくやっていけなかった人の後を受けるわけだから、
なかなかうまくいかないことが多いんじゃないかなあと思います。
しかも委譲する側は「お前に俺の大事な財産をやるんだ」
という意識を持って対峙するわけだからなかなか大変です。
これは多分世襲についてもある程度似たようなことがいえるはずで、
親と子と言っても、承継を受ける側は、承継する側の話を
一方的に聞きながら我慢していかなければなりません。
承継する側がそれ相応のバランス感覚を持っていればよいでしょうが、
あの時代の独立弁理士にその感覚があるかと言うと
ちょっと厳しいのではないかと言う感じはあります。
まともな人なら会社勤めしてますよね。特許が日陰者の時代ですし。
そういう事情から、ずるずると後継者のいないまま年寄りの
1人弁理士特許事務所が残っているケースが多数見られるのですが、
そういう事務所の承継を促すために弁理士会が取っている
施策ってのは何かずれてる感じがするんですね。
何よりその人の心の深いところにある何かに届かなければ
いけないという障壁があって、それを弁理士になる人が
たどり着けるのかと言うと微妙ですし、
ましてや本音は他人事の弁理士会がそこにアプローチなど
できるわけがありません。
まあ基本はお客さんが自らの判断で代理人変更を
進め、それにより淘汰を進めていくべきなんだと思います。
他士業では結構進んでいるとの話も聞かれたりするので、
弁理士・特許事務所業界もこれからですね。