弁理士うめざわブログ

特許事務所の弁理士による、特許事務所業界ブログ

弁理士会会長になるメリットとは

さてすでに弁理士会からの連絡があった通り、
今年の弁理士会会長については選挙となりました。
他の役職については選挙とはならなかったようです。
会長以外は普通に人数調整して選挙を回避するようですが。

ここに来てブログのアクセス件数が伸びてます。
まあ口述試験が近づくにつれてアクセス数が伸びるのは、
このブログとしては恒例のことなのですが、
どうも弁理士会会長選挙についてのキーワードもまた
数多く検索されているようなのです。

これ系は書き出したら特に支障がない範囲内でも
案外色んな話があるので、話を分けて書きたいと思います。
まずは会長になるメリット関係ですね。

正直弁理士会会長になることで、何かメリットってあるの?
なんてことを会務関係を取り仕切るような人に聞いてみたりも
するのですが、一様に言うのは、利益をもたらすようなものは
特にないという答えですね。昔はある程度あった風ですが、
そんなものがハクをつけるような時代はとっくに終わっています。

一応報酬は出ますが、副会長は一年間、会長は二年間、
会務に拘束されるのに見合うものは正直ないかなと
そんな意見が多数派のようです。
大体の人は、会長とか自分はなろうと思わないなあと
そんなことを言われます。

聞く限りにおいては、副会長は会務関係を熱心にやっていれば
普通に声がかかってきます。もう昔ほどの人気ポストでも
ないのか、どんどん若い人のポストになって来ました。
年齢的には自分と同じくらいの人が普通にやってます。

一方で会長については、二年に1人というのが
条件をさらに厳しくしているのか、なかなか一本化が
大変のようです。今回はそういう訳で
選挙になりました。副会長は1年で8人ですからね。
会長となると一気に狭き門になります。

独断と偏見になりますが、弁理士会会長になられるような方は、
自分の特許事務所を持って、もう十分成熟してて、
金銭的なものはもういいやという雰囲気です。
そういう状態になると名誉が欲しくなって
会長を目指すのかという印象です。
自分なんかもそうですが、ある程度若いうちは
しっかり仕事をしてお金を稼いで、ということが
普通に大事でして、そういうのを超越できないと
弁理士会会長は目指せないようです。

利益誘導とかそういう穿った見方もあるようではありますが、
自分が聞いている範囲では利益的なものは感じません。
一方で会務の幹部職というのはやたらと拘束が多いようで、
あれは何とかならんのかなということは思います。

とりあえず今回はこんなところで。

商標登録出願で、お客様にお越しいただくことで分かること

弁理士、特許事務所としてのご依頼事項で、特許、意匠、商標、
というものがある中で、商標については、特に面談がなくても、
手続としては完了することが可能な場合も多く、
メールでご依頼事項をお送りいただき、
処理を完結することもあります。

実際にはお会いいただき、内容をご説明した上で
手続となることの方が多いのですが、そこでちょっと
気づいたことがあります。

料金については区分ごとになりますので
保護したい商品役務をお聞きしないと料金が決まりません。
そこで大体の概要をお伺いして、あとは
こちらで推測するということも多いです。
しかし、新しいビジネス形態が多いことから、
どこに区分するかというのは迷いが出てきます。

先日のケースの場合は、打ち合わせのときに、念のため
例の「類似商品・役務審査基準」を手に応接室にお迎えしました。
打ち合わせの際に、「これはアクセサリーでしょうか」
という話の中で、「うーん」ということでこの区分は何、
あの区分は?という話をしながら、本をぱらぱらとめくって
いくうちに、はじめの話の想定とは違った商品区分に
該当するということが分かりました。
ああ、○○と言うけど、実際はそういう用途だったんだ、と。

お任せになることも多いのですが、
直接本をお見せすると、「こんなに多岐にわたるんだ」
とお客様に驚かれるとともに、いろいろ見ていくうちに
ちょうどよい分類、商品が見つかったりするので、
打ち合わせの中で決めるのもよいなと思ったりしました。

弁理士資格は目指す価値があるか否かなら、ないという結論になる

弁理士資格に価値があるのかというのは、その人の立場によって
答えはいくらでも変わってしまうのが実際のところです。

自分はといえば、多分エンジニアは向かないなということで
企業知財に入り、企業は不向きかなということで特許事務所に入り、
勤め人の限界を感じて独立したという消去法的な人生なのですが、
その消去法的な選択肢を取ることができたという点で、
弁理士資格を目指す価値があったという結論にはなります。

独立して2年になろうというところで思うのが、
何とか士という資格職は、独立開業には非常に向いています。
一念発起して会社を興そうというのは非常にリスクが大きいです。
飲食業なんて話を聞く限り大変な感じです。恐ろしいです。
それに比べれば資格職の開業リスクなんてたかが知れてますし、
その中でも特に弁理士は非常に恵まれてるなと思います。
そういうのを目指す人にとっては弁理士資格は非常に価値があります。
ぜひ頑張って難関を突破して欲しいと思います。

けどですね、世の人の大半は独立開業志向ではありません。
弁理士資格を手に、勤め人として待遇を改善したい
と思っているようです。そういう人にとって、
資格取得は価値のある選択肢なのか?

主観ではいかようにも結論は出せますが、客観的には、
弁理士資格を取った後に進みたい選択肢から類推できます。

資格取得後、企業と特許事務所、どちらを希望しますか?

弁理士資格に価値があることに疑いがなかった時代は、
弁理士資格を取得したら、企業なんてとっとと辞めて、
特許事務所に就職していました。では今はどうか?
正直、企業志望者の方が多いのではないか、
そして企業勤めで資格取得をしても辞めてくるケースは
少ないのではないか、と思うのです。

言うまでもなく、企業に残るのならば、弁理士資格は
取得のための負担に見合う価値はありません。
弁理士登録のための費用すら出してくれないのが現状です。

弁理士資格取得に価値を見出してもらえない環境(企業)と、
弁理士資格取得に一応価値がある環境(特許事務所)と、
比較して前者を選んでいるというのが近年の状況です。

という客観的な背景を見る限り、弁理士資格を目指す
価値は、努力に見合わないということになります。
もちろん資格取得の試験勉強が苦ではない人は別です。
この業界案外そういう人が多い気がします。

弁理士試験を受けて受かって、会社を辞める人が
多数派になってきて、そこで初めて弁理士は目指す
価値がある、といえるのではないかなと思います。

指標的には弁理士試験統計の受験者の内訳で
「無職(=浪人)」の数が顕著に伸びることが必須です。
昔は結構多かったです。今は激減している、というのは
その程度の価値になっていることを意味します。

結局難関資格は、独立若しくは共同経営(パートナー)
になってなんぼのものだと思うので、
単なる一スタッフに留まるのなら、資格を目指す
意味はないように思うのです。
再三ブログの中で大手特許事務所は目指す価値がない、
といっているのはそういう背景からです。
規模が大きい、というのは上が詰まっている、
というのとイコールなのです。
多くの場合は、パートナーへの道すら閉ざされています。

価値と負担のバランスが崩れているのだから、
特に若い世代が減っていくのはごく自然な成り行きです。
合格者数を維持して難易度を下げるか、合格者数を絞って
価値の回復を待つか、ということになります。

まあ雇われない人生を歩みたいなら、案外受かってしまえば
どうとでもなる感じはしています。自分は弁理士資格とは、
本来そういうものではないかと思っています。
その点、目指す方向次第という月並みな結論になるのですが。

大手特許事務所に入って3年で辞めるのは正しい

自分は大手企業の知財部、比較的小規模な知財部、
小規模の特許事務所は経験したのですが、
実は大手の特許事務所に入ったことはありません。

自分は最初が企業の知財部からだったので、
企業目線でいうと、大手でも中小でもやる仕事の
内容は変わらないでしょと思うのです。
そして今は大手特許事務所に発注する
傾向が増えてきていますが、
当時は小規模事務所が多数であり、腕が良いならば
大手企業からでも普通に発注数は多かったです。

実際に大手の特許事務所の人の話を聞いてみても
そんなに本質的に仕事の内容は変わらないようです。
もちろん法律事務所併設で、権利化業務以外の
比率がそれなりに高いところは別ですが、
規模が巨大な特許事務所では、得てして明細書作成
業務ばかり大量に受任したりしています。

そんな中、大手特許事務所に入所するのは、
大手というものに幻想が過ぎないかという面は
あるのですが、未経験又は経験が浅い段階で
入所するならば、零細よりも良いのかなと
そういう面はあると思います。

特許事務所業界の最大の弊害は、「明細書かくあるべき」
というような頑固おやじ的な弁理士ないしは技術者が
変に自分のスタイルに合わせようとしすぎて、
指導を受ける側が疲弊してしまうという点です。
零細事務所の場合はそのような当たりはずれが非常に
大きく出てしまうため、外れを引いてしまうと大変です。

その意味だと大手特許事務所の場合、外れを引く
可能性は比較的低くなります。
「大手だから体制ができている」などというのは
おそらく間違いだと思いますが、
指導の段階であまりに指導しすぎるという点が
比較的少ないように思われます。

指導する側も自分の仕事がありますし、
仕事も大量に入ってきてますので、
その案件はまあそんなもんでいいんじゃない?
という感じの肩が抜け方ができている
ケースは小規模よりある感じはします。
もちろん程度問題ではありますけどね。

「どうしてこんな誤記をしたんだ!!!」
等と怒鳴り散らす人は結構いるんですよ。
最近は減ったかもしれませんが。
聞く限りそういう事務所は衰退傾向にあるようです。

そういう業界入りたての頃の外れを引く
リスクの低減という意味では、最初に
大手特許事務所に入るというのは良いのかなという
気はします。入ったことないから分からないですが。

ただ大手に入るのってそれ以外のメリットは
あんまりわからない感じですね。
別に待遇がいいわけではないし。
比較的大規模で待遇がいいとこもありますが、
待遇と規模の相関性は薄いので、
最初に大手に入って、そこで情報を集めてから
優良特許事務所に移るというのが
戦略的には正しいのかな
ということで表題の結論になります。

特許明細書の外注募集の話はいくつか聞いてます

特許事務所の求人と違って、特許明細書を外注で作成してほしい、
という募集は大っぴらにすることはできません。
ウェブサイトなんかは不特定多数が見るものですから、
お客さんの目に留まって、そういうことはやめてほしい、
という話にならないとも限りません。

しかし実際には仕事というのは急増してあふれるものですので、
雇用はできないけど、スポットで受けてほしいという
要望は世の中にいは案外あります。

自分も正直1年少し前までそういう外注案件を受任して
生活費の足しにしていました。
やっぱり独立開業したてはそういう案件も必要に
なることがありますし、単純に在宅勤務を
希望される方は世の中には結構いたりします。

発注側としては希望のものを作成してくれれば
良いのですから、一定のスキルがあるならば
どんな人かについてはあまりこだわりはありません。
あとは、待遇面の折り合いだけです。

求人がこれだけあるのですから、外注希望も
それ相応にはあるのですが、上記の事情で
表に出ることはありません。
求人をよく読むとそれっぽく見えるものありますが。
大体伝手をたどって人を探す感じになります。
そういう市場がアクセス可能な形で形成されると
良いなと思ってます。

 

2019年4月注  現在、ソフトウェア、ビジネスモデル、IT、AI関連特許の書き手が不足しているとの情報をあちこちから聞いております。対応可能な方は、お気軽にお問い合わせください。