弁理士うめざわブログ

特許事務所の弁理士による、特許事務所業界ブログ

TPPは発効しなくても、交渉が終結したこと自体に意味がある

TPP交渉については本当にメリットがあるのか、
一方的に何かを押し付けられるのではないか、
という疑念をはらみながらも進み続け、
ようやく締結の道筋が立ったというところで
トランプ氏が大統領になることですべてが
ご破算になりそうと、そんな報道がなされています。

日本側が固執しているということは
本当のところメリットが多いのだろうか、
と思われながらも実際は推測の域を出ません。
しかし取りまとめたこと自体に意味がある
のではないですかね、という気もします。

TPPはご破算になりそうですが、
じゃあFTAに移行しますと言っても
結局はTPPの合意内容がベースになります。
日米でGDPの90%なのですから、
元々実質的にはFTAに近い話なのです。

交渉の経緯というのは全て記録に残されていますから、
ある合意事項について不服があったとしても
それは別の合意事項との妥協の産物であるのだから、
それを混ぜ返されるだけです。理由があって
そうなっているのだから、一度通過した外交交渉を
もう一度やり直すだけに過ぎないのです。

となると一度外交交渉の現場を経験している方が
立場としては有利と思われます。
こちらとしても一度妥協したけど妥協しなければ
良かったな、ということをもう一度やり直す
ことができる訳です。
向こうはメンバーが変わるのですから、
今度はあちらがうっかりをすることもあるでしょう。

新たな主張と言っても、大体はすでにこちらから
反論もあることでしょうし、大統領が変わると
スタッフも大きく入れ替わりますから、
引き継ぎきれないことも多いでしょう。
しかし、議論のベースは同じことですから、
既に合意内容について経緯を把握している方が
交渉上は強いのではないかと思われます。

そもそも就任前から大きな口をたたく人ほど
就任してからはあまり大したことはできない
ことの方がほとんどだと思うのですね。
交渉事は互いの妥協により進んでいく面
がありますから、過激なことをいう人ほど
相手は立場を硬化させますし、話は進みませんよね。

内政面では劇場型で進めることができても、
相手があって交渉するようなことは、
暴言型の人って日本でも結局何もできてない
ということが多かったような気がします。
トランプ大統領は麻生さんを思い出させるのです。

別に大統領が変わったくらいで世の中なんて
大して変わりやしないと思います。

思わせぶりなブログタイトル

ブログをやっている人はタイトルを考えるということを
どれほど重要視しているのだろうか…ということは
前々から疑問だった一方で、最近のブログはタイトルの
決定にそれなりに気を使っているものも増えてきました。
それでも実際は少数派かなあと思います。


そのブログの記事を読むかどうかって、
タイトル次第で決めていることは非常に多いのですよ。
なので、アクセスしてほしいと思うなら、
それなりにタイトルに気を使うということは
大事になってきます。

という中で、自分は基本的に本文の内容を
ある程度推測させるようなタイトルにするように
気を遣っていますが、中にはタイトルだけ見ても
ちょっとわからない、思わせぶりな内容のものも
ときどき見かけます。

それは効果的と思って書いているのか、
それとも無造作なのかはわかりません。
ただですね、それが効果的である場合というのは、
例えばブログ村のトップページに来た場合や、
既に本人のブログページに入っている場合に
限られると思うのですよ。
逆に、検索流入を考えると非常に不利です。
基本的に表記は正統派の方がアクセス対策には
有利と思っています。

ブログのアクセス数を増やすなんてのは
あまり大したことではないかもしれないのですが、
気を使うべきポイントというのは
どれもそんなに大した話ではないと思うのです。
アクセス数を増やしたいのでなければ
なぜブログをやっているのでしょうとなります。

自分の行為にはなにがしかの数字による評価
のフィードバックをそれなりに受け止めた方が
自分のやっていることの効果を向上させていく
のではないかなあと思っております。
それは突き詰めると、何のためにブログを
やっているかという話になって、
目的を失うと続かなくなってきますよね。

弁理士になれば年収が2倍


我ながらひどい釣りタイトルを考えてしまった…
のですが、あながち間違いでもないかもしれないので、
その辺書いてみました。
弁理士の年収に関する記事は検索件数も多く、
したがって流入アクセス数も多いのです。
弁理士は高年収らしい、というのと
でも最近は景気が悪くて待遇は下がってるらしい、
というはざまで現実問題どの程度なのか、
というのが世間の関心の対象です。

年収が2倍というのは資格取得前の特許技術者の年収
を基準にします。世間一般の年収との比較では
どれを基準にしてよいのかわかりません。

特許技術者の年収はどのくらいか?
400-700万円というのが現実の相場でしょうか。
ここは結構幅があるのも実情です。
弁理士を差し置いて幹部級に収まって
結構な待遇を得ている人もいます。
それも結構な大手特許事務所であるのですね。
どことはいいませんが。
しかし、そういうのは除外します。

では弁理士はどうかというとこれはもっと
幅があります。400万円程度の場合もありますし、
2000万円前後、もしくはそれ以上というのもあります。

その一方で、同じ職場に勤務しながら弁理士試験に
受かりました。といっても手当がつく程度で
実際そこまで昇給しません。転職したとしても、
特許技術者同様の「明細書を書く」仕事を続ける限り、
そこまで大幅に年収は上がらないものと考えられます。

そこをうまく脱却して待遇を向上させることが
できたなら、弁理士有資格者としてでないといけない
仕事をする環境の場合には、待遇面もステップアップ
する可能性が高いです。

その辺をえいっと中間値でとってしまうと、
特許技術者の年収って550万円くらいですかね。
で、弁理士はというと1100万円くらいはそこまでは
難しくないかもしれません。
という見立てをすれば、表題の年収2倍ってのは
実際のとこ間違ってもいないのかもしれません。
通常の特許技術者なら弁理士試験の勉強に追われている
でしょうし、その分の勤務時間の差も含めてですが。

こういうことを書いておけば、受験生の方も励みに
なるでしょうし、弁理士の方もキャリアアップせねば、
と励みになるかもしれません。
なお、弁理士になったらちゃんと情報収集に
励まなければいけませんよ。弁理士の集まりなんて
いくらでもあるのですから、耳寄りな情報を
集めるなんてことは難しいことではありません。

転職の季節ですし、待遇の悪い特許事務所はとっとと
出て行った方が業界全体のためだと思います。

 

平成29年度口述自主ゼミガイダンス-弁理士試験口述落ち対策

平成28年弁理士試験合格発表から10日が経ちました。
合格した人は合格した人の今後のステップに進まなければならない一方、
不合格者も今後の1年間の過ごし方を考えなければなりません。
口述試験に受からなかった方の勉強会がこの時期に結成されるので、
そのアナウンスを掲載いたします。

以下、案内文です。
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弁理士試験の自主勉強会です。
 口述試験が残念な結果になってしまった方、
 論文試験の必須科目を合格したものの、
選択試験が残念な結果になってしまった方、
を対象に、口述試験の自主勉強会を開催いたします。
※2名以上の申し込みで開催いたします。

尚、本会の参加者の口述受験者の合格率は高く、
平成27年、28年の2年間は少なくとも100%です。
これは、定期的に仲間同士で口述練習をすることで、
口頭試問に慣れると共に、条文の理解も
深まることによるものであると考えます。

皆様の参加をお待ちしております。

日時:2016年12月03日(午後2時30分~午後4時頃)
開催場所:浜町区民館(東京都中央区日本橋浜町三丁目37番1号)

申し込みページ:http://kokucheese.com/s/event/index/438049/
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これは毎年繰り返されているもので、
一昨年の掲載分はこちら
http://patintl.hatenablog.com/entry/2014/11/15/234217

その前の年の掲載分はこちらです。
http://patintl.hatenablog.com/entry/2013/11/15/152950

去年は忘れてました。
趣旨は同じなので参加を検討される方は読んでみてください。


口述ゼミというのはこれに限らず今では色々とあります。
口述試験の不合格者が激増した頃、受験機関も
参入が増えました。
まあ一度は受かったのだから自分たちで勉強できるだろう、
ということと対象者が昔は非常に少なかったので、
それ以前はこういう勉強会に集って勉強してきており、
これが今も続いているのが標記の勉強会です。

召喚魔法が特許になったという話と背景

当ブログへのアクセスを見ると見慣れないサイトからの
リンクが張ってあって、これはなんだろうと思ったところ、
どうもゲームと特許に興味がある方のまとめサイト的な
ものがあって、そこからのアクセスが増えていたようです。
なのでちょっとゲーム特許というものを思い出してみます。

某社でゲームの特許というものを取り扱ってはいた
ものの、なんだか疎遠になっていたのでなんとなく
検索で調べてみたところ、表記のものが見つかりました。
もうえらい昔の話でもあるのですが。

RPGで召喚魔法の実行に関する特許。特許第3220111号です。

召喚獣を呼び寄せている間って待機時間になりますよね。
その待機時間の魔法の連続使用を可能とすると
そんな内容になっています。


【請求項1】表示画面上のキャラクタ間の戦闘を制御する
ゲームプログラムを実行するゲーム装置であって、
操作入力に応じて、前記キャラクタ間の戦闘に他のキャラクタを
参加させるための動作項目である召喚が選択された場合に
召喚処理に処理の制御を移し、選択可能な召喚キャラクタを表示し、
所定の召喚キャラクタが選択された場合に連続使用可能な
魔法回数を設定する魔法回数設定手段と、
操作入力に応じて、前記キャラクタの戦闘を支援するための
動作項目である魔法が選択された場合に魔法処理に処理の制御を移し、
連続使用可能な魔法回数が設定されている場合に、
連続使用可能な魔法回数をリスト表示する魔法回数表示手段と、
リスト表示された連続使用可能な魔法回数の中から、操作入力に応じて、
選択された連続使用する魔法回数を設定する魔法使用設定手段と、
前記キャラクタに対応させて予め用意された魔法をリスト表示し、
操作入力に応じて、表示された魔法の中から連続使用する魔法の選定を、
連続使用の回数分行う連続魔法選定手段と、
前記連続魔法選定手段により選定された連続使用する回数分の魔法を、
連続して実行する連続魔法実行手段と、を備えたことを特徴とするゲーム装置。


審査段階ではおそらく29条柱書的な部分で拒絶理由が来たことが
予想されます。審判に行って前置審査でひっくり返って
特許になっています。明細書を読んだ限りどの辺に
進歩性があるのかあんまりよくわかりません。
審判書類は取り寄せないとわからないし、
そこまでして調べようという意欲は正直ないです。

特許の内容を紹介したいのですが、進歩性の論理がどこにあるか、
というものがわからないと解説のしようがありません。
他の解説サイトでもなんかわかったようなわからないような解説です。
なら別の特許と思っても手頃なのは多くはないのですね。

これがアクティブタイムバトルだとそれなりに
進歩性のロジックが立つのですけどね。
説明のしやすさから、今でもATB特許は何かと取り上げられます。
ですので、ATBは特に大きくはもめることなく特許になりました。

自分はATB特許の審査の最終段階の頃某社に入ったのですね。
そこでクレームを広げようとか話をしたら、
依頼先の弁理士の方から上司の方に電話がかかって
余計なことをするなとかそんな話になりました。
信じられない話ですが当時はまだ弁理士が偉そうな時代。
出願書類の請求書を見たら100万円とか書いてありました。

よく読んでみるとこの召喚魔法の特許はその某社の特許出願。
しかも自分がまだ在籍しているころじゃないですか。
社内でごたごたがあって、とばっちりを食って
なぜか商標担当になっていたタイミングのようです。
まあその経験が独立後の商標業務に生きてたりします。
関わってないからこの案件はようわからんのですが。

この時代にゲーム会社は特許の取得件数が急増していますが、
理由はって言っても正直誰にもよくわからんのですよ。
知的財産の保護というのがようわからんけどきっと大事
だよね、という空気感がなんとなくできて来た頃。
当時のゲーム会社は金ならとりあえずある、
とそんな時代でした。

何かビジョンがあって特許戦略を立てたというよりは、
予算ならあるし人員もそろえていいから、
社内的に財産になるものならきっちり確保していった
方がよいよね、という程度でした。
あれから十数年たって、それは結局どんな意味が
あったのかね、というのは総括されたかどうかは
わかりませんが、紆余曲折を経ながらも
部門は残っているようです。

ま、ゲーム業界に限らず知財業務の拡充ってそんなノリで
話が出てきます。そこに対して何らかの答えを
出せるのが優秀な弁理士なのだと思います。

某社の知財業務立ち上げにかかわった人は
さすがに優秀でしたよ。まだ中規模だったころの
酒井国際で当時伝説の明細書書きだったのを
引き抜かれてきたのですが、その後社内のもめごと?
で出てった後はドワンゴ知財部長になったようです。
そして今ではベンチャー企業の社長をやっているとか。

召喚魔法とは何の関係もない話になりましたが、
時代が進むと世の中も変わるって話です。