弁理士うめざわブログ

特許事務所の弁理士による、特許事務所業界ブログ

クライアントファーストとは、従業員ラストの意味

クライアントファーストなる文言に私はもやもやするわけです。
特許事務所でもそんな言葉が出てくる事例が出てきていますよね。
それっていったい何なんでしょうね。
先日の都議選では都民ファーストが躍進しましたけど、
それも私の疑問に拍車を掛けます。

料金をいただいてご依頼をお受けしている訳ですから、
そのご依頼にこたえるのは当然のことなわけです。
クライアントファーストと言うのはそれ以上の
優先順位をつけるということですよね。

クライアントファーストではないってどういうことなんでしょうか。
お客様の要望に応えない、後回しにする、意図をくみ取らない、
というのは第一主義とかではなく、単に勤務態度が悪いだけですよね。
しかもなんとかファースト、というのは相対的なものですから、
他がひどければ、顧客対応がひどくても、
クライアントファーストは理論上成り立ちます。

語感的には、自分たちよりも顧客の優先順位を上げる、
ということにニュアンスが置かれているような
印象を受けます。都民ファーストの会は、
「自分ファーストの議員から、都民ファーストの議員へ」
等と述べていますから、「自分本位ではない」
ってことなのでしょうか。
若しくは「お客様は神様です」ということでしょうか。

しかし顧客優先は言うまでもなく当然に出てくる話でして、
そこをあえて覆すというのはそれなりに理由があるから
なわけですよね。
例えば顧客が値下げ要求する中で、それに応えない、
というのは利益やコストのバランス上出てくる話です。
無理な納期期限に対して、それは厳しいと返答する、
というのは自分の会社を守るためです。
普通は理由がある行為ですよね。

クライアントファーストと言うということは、
その辺の序列を崩してまでもあえて顧客寄りに設定する
ということでしょうから、そのしわ寄せは従業員に
来る訳です。クライアントファーストで、俺セカンドだから、
お前ら後はしっかりやれよと、そういう順位付けなのですね。

顧客重視もそれはそれで必要な視点ではありますが、
日本の企業はそこを重視しすぎたために雇用環境を
悪化させてしまったような気もしますので、
実は従業員ラストでした、とならないようになりたいものです。

ここの所仕事が立て込んでブログの更新がおろそかに
なってしまったのですが、ニュースは入ってきますので、
そんな中微妙な連想が働いてしまったりします。

平成29年度弁理士論文試験(必須科目)、問題解答の公表

今年の弁理士試験論文式筆記試験(必須科目)問題及び解答(平成29年度-2017年)
http://www.jpo.go.jp/oshirase/benrishi/kako/mondai/h29benrisi_ronten.htm

が公表になりました。

今週の日曜日が弁理士論文式試験の試験日だったのですね。
自分は仕事にすっかり追われていてここ1週間更新してませんでした。


論点は以下の通りです。
PDF記事を見るのもかったるいでしょうし、
内容的にもあっさりしているのでそのまま写します。
ニュース性の高い事項ですから特に問題ないでしょう。

【特許・実用新案:論点】
【問題Ⅰ】
以下の事項についての理解を問う。
1 国際出願の出願手続、国際段階における補正、及び国内移行における手続
2 外国語書面出願の概要・趣旨
3 外国語書面出願の補正及び誤訳に関する拒絶理由
【問題Ⅱ】
特許権に関する以下の事項についての理解を問う。
1 侵害の要件
2 試験又は研究のためにする特許発明の実施
3 裁定による通常実施権の設定
4 冒認の無効理由

【意匠:論点】
【問題Ⅰ】
意匠法上の物品についての理解を問う。
意匠法が規定する画像を含む意匠の保護の理解を問う。
【問題Ⅱ】
意匠権が独占権であることの理解を問う。
意匠登録無効審判の請求、先使用による通常実施権の抗弁、先出願による通常実施権の
抗弁の理解を問う。

【商標:論点】
【問題Ⅰ】
商標登録の異議申立制度及び無効審判制度についての理解を問う。
【問題Ⅱ】
1 商標法第4条第1項第17 号についての理解をTRIPS協定との関係で問う。
2 商標法第4条3項についての理解をパリ条約に基づく優先権主張との関係で問う。
3 商標法第3条第1項各号についての理解を「その商品」との関係で問う。
4 商標権侵害の主張に対する抗弁についての理解を問う。


特許と商標で国際出願を絡めてきました。
商標法第4条第1項第17号の趣旨とか、聞かれると焦りますよね。
「知らないと解けない」という問題が多めな印象です。
年によっては、メジャーな事項を抑えておいて、
なんとなくそれっぽいことを書いておけばいい年なんかもありました。
論述力とかよりも、直前まで基本書読んでろってのが今年の問題でしょうか。

特許法は国際関係を中心に手続き主体を、
意匠・商標は趣旨をきちんと理解しておくように、
というメッセージが隠れているのかもしれません。
まあそのメッセージを翌年あっさりひっくり返してくるのが
某官庁でもあるのですが。

選択科目のある人は、これからが終盤戦です。
モチベーションがこの時期本当に切れるんですよね。
口述対策は8月に入ってからが目安です。

特許事務所の転職先は年寄りが多いところが比較的無難


転職を考えるとき、一般論的には若い人が多すぎる職場は
避けた方がよいです。これは特許事務所に限った話ではありません。
若い人が多いということは、人がそれだけやめているということです。
そして、人生設計の中心に据える職場として、
非常に不安が残る環境の可能性が高く、それが理由で、
年齢が上がるにつれて離脱する人が多く出ている可能性があります。

特許事務所なんてのは、新卒で勤めるような職場ではありません。
何らかの職を経験して、転職してくるような職場です。
ですので、必然的に相応の年齢以上になるはずです。

ということを思うのですが、年齢層の高い低いで、
職場環境はどう違うのかをまとめてみました。

1)年齢層が高い職場は残業が比較的少ないです。
理由は簡単で、年寄りはそんなに遅くまで働かないからです。
そんなスタッフが多い職場で早く帰っても、特に咎められる
ことは少ないでしょう。

2)例えば60歳の人の応募を受け付けて、採用する、
ということは比較的少ないと思います。
スタッフの年齢が高いということは、それだけ長く勤めている、
ということが考えられます。
人の出入りが多い特許事務所は少なくないですし、
そういうところほど年齢層は低めに出がちです。
定着率が高いのでは、という推測が働きます。

3)年齢が上がるにつれて、華やかさ的なものよりも、
人生設計のできる職場かどうかの方が気になります。
高年齢の人が働けている、ということは、人生設計的に
何とかなる程度の勤務環境と待遇があるのでは、
という推測が働きます。


こう見ていくと、すごく良さそうな感じがしますが、
マイナス面を検討してみます。

4)活気はありません。今日も明日も明後日も、
同じような生活であり、その繰り返しです。
キャリアアップとか、そういう考えも乏しいでしょう。
でも、特許事務所なんてそんなもんかもしれません。

5)体質が古い
フレックスとか在宅勤務とか、今風な制度には前向きでは
ありません。けど弾力的な勤務時間なんてのは、
得てして慢性的な長労働時間を正当化するために利用されている
というのが実情ではあります。
定時に出勤して、定時に帰る、というのが実はもっとも
人間的な暮らしであるような気もします。

6)柔軟ではない
決まったやり方や決まった業務以外のことに対して、
前向きではないかもしれません。
変化に対応できない、というのは案外若い世代に対しては
ストレスになったりします。


結局、転職というのを攻めの視点で見るか、
守りの視点で見るかで、希望する勤め先は変わってくると思います。
ただまあ、自分の感触だと、転職希望者は全般的に、
転職の希望に対して保守的な傾向があるように思います。
だとすれば、ある程度老舗の特許事務所の方が
比較的間違いは少ないのかなとそんな気はします。
まあもちろん一部ハズレもありますので、そこは要注意ですが。

個人的には、変に華やかすぎるムードをつくっている
特許事務所・法律事務所はちょっと危険な印象を持っています。
具体的な例を挙げるとわかりやすいのですが。
特許事務所が華やかなはずもなく、盛っているということですから。

特許事務所では勤務時間中にビールを飲んではダメなのか

就業時間中にノンアルコールビールはダメ? 出勤停止になった30代女性に批判「職場に”飲んでる気分”の人がいることが問題」 | キャリコネニュース

勤務時間中にビールを飲んでいたのがばれて叱られた話が
ネットで話題になっていました。
世間的にはそれはけしからんと言う流れが多いようなのですが、
特許事務所的にはそれってどうなのか?
というのは若干考えるところです。

結論から言うと、飲みたければ飲めば、
でも効率落ちてもその後のことは知らんよ、
という職場が一番多いのではないでしょうか。
ちなみに独立前の職場はそんな感じでした。

あと勤務時間が、あってないような特許事務所が
多いですよね。飲み会があって、そのあと事務所に戻って
仕事とか言う人が時々いたりします。
それ仕事になるの?って話にもなったりしますが、
飲み会の後で事務所に戻っていったりしているようです。

パートタイムの人がそれなりにいたりすると、
飲み会よりもランチ会にしたいという声が所員から上がり、
所内の飲み会的な行事が、ランチ会に
置き換わることもあったりします。
そういうときに「ランチビール」というメニューがあったり
するのですが、そういうときにビールを飲むかが悩ましいですね。

過去の職場ではそれを戒めるような空気は特になく、
「よし、飲もうか」などと言ったりもしますが、
「うーん、自分はやめておく」という声が
いくつか出てきたりして、そんな中で自分だけ飲むのも
気が引けることから、結局飲まない感じになります。

特許事務所のルールというのは、大きな職場ではないから、
「みんながいいならそれでいいんじゃない?」
というものが多いような気がします。
その「みんながいい」にローカルルールが発達したり
するので、まあ発言権のある人次第になりますね。
古臭いとこだとうるさいらしいと聞いたりします。

あと、各人の売り上げの数字が見えやすいので、
自分のやることをやってたらいいよという空気感はあります。
そういう面で自分の役割を果たせている環境であれば、
それ以上はとやかく言われない環境も多いですし、だから
特許事務所は自分に合う、という方も多かったりします。

今はどうかと言うと、独立しているのだから好きな時に
好きなだけ飲めばいいのですが、日中飲むのはいろいろ
影響するので、結局勤務時代とそんなには変わりません。

勤務していたころと同じくらいの自由度、
勤務していたことと同じくらいの可処分所得、
よく見てみれば現在も以前と同様の、
海外案件の比率が多めの何でも屋的な仕事が多いです。

独立したからと言って何も変わらないなと思う今日この頃です。

弁理士の仕事って一般的にどういうものをいうのか

弁理士の仕事ってどんな仕事ですかと聞かれたとき、
一般的には特許を取る仕事ですよ、と答えることが多いと思います。
そして、特許明細書を書くことが主要業務と思われている感じがします。

なら明細書を書くことが弁理士の仕事なのかというと、
特許技術者って仕事もあるよねって話になります。
そうなると弁理士の専権性がという話も混ざって
ややこしくなったりもしますが、明細書書く仕事って
法律の仕事という観点から言うとちょっと遠い感じがしますよね。
そういう観点で見たときに、弁理士試験は弁理士業務に
役に立たない、という議論が出てくる余地があったりします。

弁理士・特許技術者の求人として最も多いものは明細書作成業務です。
そして、なんだかんだ言いながらも知財業務で最も人気が
あるのは、明細書作成業務のように思います。
自分は過去何件明細書を書いてきたのだ、ということが自慢だったり、
数をこなしてこなかった弁理士は半人前だ、とう主張が見られたりします。
ちなみにですが、外内業務の求人はなんだか苦戦している気がします。
明細書を書く仕事をやりたい、という人の方が多いのでしょう。

「明細書を書く仕事」を弁理士の仕事と見る向きは、とくに開発出身者
によく見られる傾向のような気がします。エンジニアにとって、
発明提案書を作成し、それを説明して特許にしてもらうのが
弁理士という職種の人との唯一の接点です。
そういう中から弁理士という職業のイメージを膨らませる傾向が
あるのかなと思ったりします。

ちなみに自分は知財部の出身ですので、知財業務=明細書作成
という視点にはやっぱり違和感があります。
知財部出身の人は明細書に短絡させる人は少ないのかなと思われます。
知財の人間にとって、明細書作成というのは、開発から上がってきた原稿を、
外部の特許事務所に引き合わせる行為でしかなく、
多岐にわたる知財業務の中のほんの一部でしかありません。
こんな風に、知財業務といっても人によって見方は違います。

で、弁理士業務って試験科目が法律科目であることから見ても、
基本的には法律業務だと思うのです。
明細書を書いているよりも、中間処理の方がより
弁理士業務っぽい感じがします。
案外特許事務さんの方が法律業務に近いことをやっており、
弁理士よりも法律に詳しかったりします。
また、独立すると意匠や商標もやることになり、
移転などの手続き依頼も発生します。
こういうのやってると、弁理士業務って本来こういうことだよな、
っていうことを思ったりするのです。

今これから弁理士試験たけなわとなりますが、
この時期に勉強したことってのは、こういう本来の弁理士業務に、
直結しているなあと思います。
中にはこの時期やったことが役に立っていない、という人もいますが、
それは弁理士業務をやっていないからだと思います。
弁理士として弁理士業務をやろうとするのなら、
弁理士試験の勉強内容は意味のあることなのではないかなと思ってます。