弁理士うめざわブログ

特許事務所の弁理士による、特許事務所業界ブログ

平成30年度(2018年)弁理士試験の試験会場と、試験の年間予定

平成30年度弁理士試験の試験会場が発表になりました。
短答試験は今年も渋谷かあと思いましたが、よく見ると青学ですね。
国学院と大体同じ場所なので見落としそうになりましたが、
場所は異なります。それと、立教大学でも開催されます。
結構ちょくちょく変わるものですね。あとまあ受験生も減ったので、
使える場所はその分増えそうです。

毎年のことですが、このGWが最後の詰めの時期です。
あとは試験前に最終調整をして、試験に向かう感じです。
模試があるので受けたくなりますが、どうなんでしょう。
例年どこもあまり傾向をとらえていないような気がするのですね。

無理に受けても、中途半端に時間と体力と消耗するだけなので、
一番大事なのは短答対策だと条文を読む時間を確保することです。

場所ですが、東京については、立教は普通に池袋から歩きですね。
立教大学生と同様のルートです。
青山学院大学については、渋谷から歩きか、
あとは国学院大学のようにバスで行くか。
歩きだと少しありますね。
ルートの確認はしておいた方が、当日の間延びがなくなります。

今年もおそらく受験生は減るのだろうなあと思われますが、
少ない方が本人たちにとってはいろいろ便宜なことが多いので、
良い方に考えるのが良いかなと思います。


平成30年度弁理士試験の試験会場の詳細は下記のリンクの通りです。

http://www.jpo.go.jp/torikumi/benrishi/benrishi2/h30_shiken-kaijo.html


1 短答式筆記試験(平成30年5月20日(日曜日)12時30分から16時00分まで)

(1) 東京  
青山学院大学 青山キャンパス 〔東京都渋谷区渋谷四丁目4-25〕
立教大学 池袋キャンパス 〔東京都豊島区西池袋三丁目34-1〕

(2) 大阪  近畿大学 東大阪キャンパス 〔大阪府東大阪市小若江三丁目4-1〕

(3) 仙台   東北福祉大学 仙台駅東口キャンパス 〔宮城県仙台市宮城野区榴岡二丁目5-26〕

(4) 名古屋  南山大学 名古屋キャンパス 〔愛知県名古屋市昭和区山里町18〕

(5) 福岡  福岡工業大学 〔福岡県福岡市東区和白東三丁目30-1〕

2 論文式筆記試験【必須科目】(平成30年7月1日(日曜日)10時00分から17時00分まで)

(1) 東京  立教大学 池袋キャンパス 〔東京都豊島区西池袋三丁目34-1〕

(2) 大阪  大阪工業大学 梅田キャンパス 〔大阪府大阪市北区茶屋町1-45〕

3 論文式筆記試験【選択科目】
(平成30年7月22日(日曜日)10時00分から11時30分まで)

(1) 東京  青山学院大学 青山キャンパス 〔東京都渋谷区渋谷四丁目4-25〕

(2) 大阪  関西大学 千里山キャンパス 〔大阪府吹田市山手町3-3-35〕

4 口述試験
(平成30年10月20日(土曜日)から平成30年10月22日(月曜日)のうち、いずれかの日)
ザ・プリンス パークタワー東京 〔東京都港区芝公園四丁目8-1〕

良い弁理士とはどんな弁理士のことか

弁理士業務は職人的な業務に位置付けられることから、
業務能力の向上に向けて研鑽を積まれていることかと
思われますが、さてここで良い弁理士とはどんな人材なのか、
ということが問題になります。

良い人材と言うときに、求人情報に掲げる事項に
より多くあてはまるのが良い人材であるかのように
思ってしまうのですが、そこにはずれがあります。
より多くの採用者によって採用したい条件の人材、
というのは、ある程度ボリュームゾーンにあるであろう、
と予測される層であるので、比較的若い人材に集中します。
そこで優秀な弁理士=若い弁理士となるか、
というとそこはイコールではないでしょう。

そういうことを考えていくと、例えばTOEICで高得点を
取るとか、他にも資格を取るとか、あるいは何かの技術分野で
知識を得るよう学ぶとか、というのは、一見優秀な人材に
なろうという努力のように見えるのですが、
それはどうも採用者の目線を気にしているような気がします。

もちろん能力の高低の評価、と言うのは最終的には
誰か特定の評価者に依存することになるのですが、
そこはきっと潜在的な依頼者層が評価者になるのではないか、
と言うように考えます。

依頼人にとって優秀な弁理士と言うのは、
要するに依頼者からの要望に応えるということです。
ただそれも多岐にわたり、画一的な答えはないような感じがします。

依頼者に応えるというのは、1つは、専門知識を掘り下げること
によるというのが1つあります。特殊な技術分野で特許を
取りたい、というような場合だと、その技術への理解があるかどうか、
というのは依頼人にとって重要な要素になります。
この点については、確かにそうではあると思うのですが、
弁理士に優秀さと言う観点で見たときに、割とみんな
この掘り下げた専門知識、と言う観点に偏りすぎている
感じはするのですね。

もう1つは、顧客の問題に対して、個別事例のデータベースが
頭の中に数多く入っている、ということが重要に思います。
例えば特許の明細書を書くという場合でも、こういう拒絶理由が
でたらどうかとか、訴訟でこういう主張が出たらどうかとか、
そういう事例を数多く知っておくことで、出願原稿の作成時に
幅広く手当てしておくことができます。

もちろんコンサルティング的な業務においては
より直接的に重要な話で、個々の相談事項に対して、
これはこう、あれはこう、という解答例を数多く持っている、
ということはおそらく顧客にとっても頼もしいものであると考えます。

原則を理解することを弁理士試験では求めているのですが、
原理に沿って検討するというのは能力的にはある程度必要ですが、
やっぱりこの場合はこうしますよね、という事例の積み重ねを
そのまま引用してくる方が安心感はもちろん大きいです。

事例の積み重ねと言っても、もちろん判例や審決例等ももちろん
重要なのですが、そこまで大事に至る前の段階で、お客様が
どう判断しがちかということも重要です。
この場合はこうするとこれくらいお金がかかる、というのも
結構重要な情報でしょう。こういうオープンに語られづらい情報も
個別事例として重要になってきます。

弁理士として研鑽をつむ際に、色んな状況が起こりうる、
ということに対してイマジネーションを広げていくことは、
他の専門家と同様に必要なことではないかなと思っています。

安月給で空気が淀んでいる特許事務所は、転職回数が多い人を嫌う

世の中一般的に、転職回数が多い人は
嫌われるのではないか、という危惧が持たれています。
実際のところ転職回数が多いのはどれほどいけないのか、
というのはあまり何とも評価しづらいところがあります。

色んな話を聞いた感じだと、転職回数が多い人でもOKの
特許事務所と、そうでない特許事務所に二分されるようです。
転職回数が多い人を嫌がる職場は確実に存在します。

転職が多くても良い、と言ってもキャリアに一貫性があるのが
大前提です。全然違う職種を、あっち行ったりこっち行ったり、
と言う人が評価されることはありません。
未経験の状態で年だけ重ねたってことですからね。
キャリアを重ねつつ転職回数が増えたというのが前提です。

問題は、転職が多い人を嫌う職場は応募に値するかどうかです。
結論から言って、多くは安月給で、
下っ端はいずらい職場がほとんどです。

とある超大手特許事務所では、転職回数は1回までが採用基準
という決まりがあるそうです。そこは給料が安いそうです。
新人は忘年会でかくし芸をしなければならないそうです。
なんだか空気が淀んだ印象があります。

転職回数が少ないことを望む、というのは大体が同時に
年齢も若いことが求められています。
自動的に給料も安いという傾向になってきます。
いいように使える若いのが欲しい。大体そんな求人です。
ヒエラルキーの最下層を求めている訳です。

それは裏を返すと実力主義でもないことを意味します。
実力主義と言うのは、優秀であれば、年齢が上の人、
在籍年数が長い人、というのを飛び越えて厚遇されていく、
ということです。
優秀であればその人の属性を問わずに登用する組織なら、
逆に採用する際に若い人にこだわる必要もないですよね。
転職回数も同様です。

純血主義と言えば聞こえがいいですが、
大体が柔軟性に欠ける組織運営になっています。
明細書の書き方なんて人それぞれですが、
所長の書き方通りでないと認めない組織運営だから、
よそのスタイルを身に着けたスタッフを受け入れなかったりします。

そして、よそと比較されるのを嫌います。
転職を繰り返してきた、というのはどこもよくない職場だった、
ということですから、うちのほうが良い職場ではないか、
と言う類推が働いてもおかしくありません。
でも実際は自分のところの待遇に自信がなかったりします。
その他大勢と同様に簡単にやめられてしまう職場
なのではないかと危惧しているのですね。
処女を過度に求める童貞のような特許事務所なのでしょう。

柔軟な働き方に自信があるような特許事務所であれば、
能力面のみを重視し、他は柔軟に対応するはずです。
言いなりになりそうなスペック面を重視する、
というのはおそらくは待遇面もそこから類推できそうです。

現在の職場で、キャリア的な進展がなくなったり
居心地が悪くなったりした場合にどうするかと考えたときに、
いたずらに転職回数を増やしたくないという判断が
働くことが多いです。
ただ、転職回数が多い人を嫌がる特許事務所は
全般的に待遇面でも居心地の面でも微妙な特許事務所が多いので、
遠慮なく転職先を求めてしまって良いと思います。

漫画村と漫画タウンから考える知的財産紛争の現在

漫画村という著作権侵害の脱法行為を行っているサイトへの
批判が日に日に集まり、ついには先日、サイトが落ちてしまいました。
悪は滅びる的な風潮が出る中で、あざ笑うように漫画タウン
というサイトが出てきたのですが、それもまた落ちてしまいました。

彼らの発信情報は世の中をおちょくるようなものなのですが、
「既にどこかのサーバにアップロードされているものへの
リンクを提供しているだけなので違法ではない」というものです。
漫画村の提供態様をあまり把握していないのでコメント
しづらいのですが、そんな理由で権利侵害していないそうです。

どの道追い込まれるのだなと言う雰囲気が出てきているのですが、
法廷闘争などではなく、世論の批判により追い込む、
というのが日本的だよなあと思いました。
知的財産の紛争件数は、世界の中でも日本が圧倒的に少ない
という数字が出ています。米国、ドイツが多く、実は中国も多いです。
裁判に引っ張り出されて訴訟になるというのは、
日本なんかよりも中国の方がはるかに多いんですよね。
法廷闘争もかなりスムーズになっているようです。

「世間の目」によりけしからんものを懲らしめるというのは、
いかにも日本的な風潮であり、そういう社会的な圧力により
悪しきものを排除する、という社会システムのおかげで、
知的財産事件そのものが非常に少なくなっています。
結果として知的財産権の取得へのモチベーションは低くなっており、
商標登録等は海外展開に合わせて慌てて取得ことが多いようです。

違法コピーそのものは音楽やゲームなどが通ってきた道ですよね。
紙媒体により提供される性質上、違法コピー問題に本腰を
入れる機会がないままここに到達してきたという感想です。
Amazonなんかでも書籍コンテンツのデジタル化を進めようと
しているようですし、早晩起こる問題でもあったのでしょう。

一方でTwitterなんかでもまともに解釈したら
それ著作権侵害だろ、というアップロードが氾濫しています。
実害はないということでスルーされている面もあり、
どの辺で線引きするかは微妙な問題があります。
JASRACみたいに徹底的にやると、立法の趣旨的にそこまで戦う
ことは本当に想定されていたのか、という問題も出てきます。
WantedlyDMCA申請問題のように、法の厳格適用をすると
やりすぎではと言う問題も一方では起こってきています。

要するに法律論だけで議論するのは限界があります。
技術や製品の進化を、おおもとの法律は想定していません。
著作権法自体つぎはぎだらけです。
好ましくないものは技術的に手当てし、技術的に手当てしやすい
ように商品の流通形態を変化させていく必要があります。
ゲームなんかは、違法コピーをどう排除するか、
という観点を非常に重視して製品が変わってきました。
FFやドラクエのような大作主義から、スマホゲームのように、
簡素でありながら版元がコントロールしやすいように
変わってきたような感じでです。
それと比べると出版社は古さを感じさせますよね。

本当は別の記事を書く予定だったのですが、
導入として雑感的なことを書いているうちに疲れてきました。
本当に書きたかったことはまた今度まとめます。

特許事務所の独立開業後4年目ってどんな感じなのか

自分が独立開業を視野に入れ始めた頃、4年目って遠い先の
話だと思っていました。まず存続し続けられるかが大事で、
ある程度の売り上げが継続して立ち続けてないと、
そんなに長い期間存続できないからです。

まあよその特許事務所との比較で4年目は、まだまだ
駆け出しなのですが、いざ自分がやるとなるとえらい
長い道のりのような感じがしてました。
最初に目標をもっと短期的に見ていたので、その先は、
こうしようというより、きっとこうなるのだろうなと言う
漠然とした憶測のようなものしか持っていませんでした。

3年もたつと継続的な取引相手も出てくるのだろうなと
思っていました。もちろん同じお客様から仕事が
入ってくることもあるのですが、それはたまたま案件が
発生したというだけで、ないときはないです。
その点で「継続的に案件を出す」というお客様はいないです。

あと前回の記事でも書きましたが、
「月に特許出願何件」という仕事の入り方もないです。
幅広く色んなことをやっています。
特許出願やっていない月もあります。

外国特許をもっと取りたかったなあと独立当初
思っていましたが、ここはどうやら競争が激化しています。
営業や広告次第ではどうかというのもありますが、
まあ積極的にはやっていません。

予想通りに進んだのが、事務所の引越と事務スタッフの採用です。
両方とも決まるときは突然だったのですが、
後で考えると独立当初に予定していた時期に、
ある程度理想的な形で決まりました。

このくらいの時期にパートナーだったり、
技術スタッフだったりがいたりするのかなと予想したり
もしていましたが、結局いないですね。
そこは自分の胆力との兼ね合いが左右してきます。

フルタイムの雇用と言うのは博打感が大きいのです。
そこで思い切ったアクションを起こせるかどうかは
その人の性格に左右されます。
事務スタッフの採用でさえ、不安が先行しました。
技術系は、ある程度都合がいい人を考慮して声を掛けましたが、
どうもうまくいきませんでした。

まあ自由にやっていければいいかなあと言うタイプの人は、
ここから手を広げない人が多い感じがします。
ある程度の我の強さや、エネルギーの強さや、
そういう感じのものがないと、この大変さに挑もうという
風にはならないかもしれません。
もう最初の独立する、というところで
エネルギー使っちゃってますから。

自分は、日々の大変な状況を大変じゃなくするのに精いっぱい、
と言うのが自分の日常と言うところです。
ここから広げる人は、そういう気持ちのところから違う感じですね。

まあ頑張るだけです。