弁理士うめざわブログ

特許事務所の弁理士による、特許事務所業界ブログ

特許翻訳はもう稼げなくなってきている

特許関連業務と言えば明細書を書いたりといった
権利化業務がメインとなりますが、外国出願
の場合には翻訳業務というものがあります。
知財業務の収益性という点では、確かにどの
業務も昔より儲からなくなってきていますが、
一番顕著なのは翻訳周りだと思われます。

約20年前の特許翻訳と言えば翻訳者の数が
異様に少なく、翻訳者の手配が困難で、
当の特許実務者もほとんどが英語が苦手、
もしくは英語はやりたくない人が多数派でした。

こういう事情もあり、当時の特許翻訳は、
どれもこれもできの悪い翻訳ばかりだったのに、
翻訳単価は異常に高かったのですね。
その頃の外内特許出願の訳文を見ると
その名残がうかがえます。
お客様にはその分以上の請求の上乗せをして
外国特許出願費用全体としても
バカ高いということになっていました。

その辺の事情が様変わりしたのは2004年とか
そのあたりの弁理士制度改革と共に
試験が簡単になり始めた時期と重なって
いたように思います。

その頃には「翻訳」が食えなくなっており、
「特許翻訳」への転身がかなり増えてきた
ようなのですね。単価はともかく、
翻訳者の翻訳精度がこのころから大幅に
改善されてきたように記憶しています。

それからも翻訳希望者は増え続け、
それと相反して単価は下がり続けます。
あと、知財バブルと共に英語のできる
人材も知財業界に増えてきて、自前で翻訳
等するケースも多くなってきました。
そしてリーマンショックと共に特許業界の
競争激化が本格化し、翻訳単価の下落に
拍車がかかります。

特許翻訳には本質的な構造問題があります。
仕事の発注フローが、

出願人 → 特許事務所 → 翻訳会社 → 翻訳者

こんな風に2か所も中抜き要因がいるのです。
これ要するに土建屋の孫請けひ孫受けと
同じ構造ですよね。
外国出願の単価が高かったころは特に
問題はなかったと思うのですが、
元請けの単価が下がって来れば、末端翻訳者の
取り分も当然下がります。

出願人から直接受けられれば上記問題は起こりません。
が、そんなこともないでしょうから、せめて
翻訳会社を通さないように特許事務所に直接
営業をするしかありません。
それで採算性の高い顧客を十分に確保する
とともにつなぎとめる能力というのは、
多分、弁理士として独立開業するよりも
高いスキルが求められているように思えます。

・おおもとの翻訳単価の下落
・中抜き問題

の2つを考慮すると、こんな構造で高い採算性を
上げるというのは非常に困難になっています。
弁理士・特許技術者も確かに
特許事務所が間に入ってはいますが、
翻訳会社は中に入りませんし、
事務所側のマージンも年々減少しています。

現実問題として、翻訳者として業界に入った人は、
実は多くが特許技術者(特に外内)になっており、
中には弁理士になった人もいます。
インハウスだとそう声を掛けられる
ケースも多いですね。

外内業務のように技術理解能力以上に
英語能力の比率が高いものもありますし、
ある言語で書かれた文章を読んで理解した上で、
他の言語の文章として書き起こす能力があるなら、
特許技術者として多くの場合は通用するでしょう。

翻訳者と特許業界の現状はこんな感じなのですが、
まとめた文章が見当たらないので書いてみました。

弁理士会が弁理士に対して出している求人

特許・知的財産関連の中途採用の求人と言えば、
求人媒体で出ている一般的な弁理士・特許技術者
に対する求人や、任期付き審査官の求人があります。

そういう一般的な知財業務の求人以外にも、
特許庁では非常勤や臨時任用職員などを
ときどき募集していますし、弁理士会では、
弁理士会の事務局スタッフの求人が時々あります。
この辺あんまり認知されていませんが、
弁理士業務外の求人は意外とあったりします。

それとは別に少し気にかかるのが、弁理士会から
毎日送られてくる何らかのメールの中で、
弁理士向けの弁理士会からの派遣的な
業務の募集というのがあります。
任期付きなのでそれをどう思うかという側面は
ありますが、ものによってはキャリアのプラスに
なりそうなものも時々あります。

どんなものがあるかというと、思いつく限りでは
・インドやバンコクに2年間派遣
・会長室付で関連団体の業務を行う
・東京税関の知財

うろ覚えなのでこれで全部ではないですが、
この他裁判所の調査官とか、
時々いろんなものが流れてきます。

募集期間も短いですし、自分は「へえ」とか
言って適当に読み流すのですが、
毎年何か流れてくるので、注意して
みてみると良いかもしれません。

ペッパーランチ小滝橋通店は、フレッシュネスバーガーの跡地(西新宿7丁目)

当特許事務所は西新宿7丁目にあり、この近くには長いこと
フレッシュネスバーガーがありました。
そんなには利用しなかったのですが、
たまに長居したいときは利用することもありました。

ただそういう「いつもすいているから利用しやすい」
という場所は繁盛していないということですから、
ついに先日フレッシュネスバーガー小滝橋通店は、
ついに閉店となってしまいました。

マクドナルドが近くにあったとしても
競合にはならなかったと思いますが、
南にいけばモスバーガー
北に行けばバーガーキングがあり、
この辺との兼ね合いで厳しかったかもしれません。

さてその跡地に何ができるかと期待していたら
ペッパーランチができました。
ペッパーランチといえば心斎橋の強盗強姦事件を
まず思い出すのですが、こういう事件が起こる
ということは会社の体質の中にそういう要素が
あるという印象がぬぐえません。

まあそれ以前に、過去にペッパーランチ
行って食べた印象だと、あまりおいしい店では
なかった記憶があるので、せっかくの近隣の
場所にそんな店作るなよというのが
自分の正直な感想です。

そういう自分の感情とは裏腹に、
開店すると結構人の入りが多くなり、時間帯に
よっては行列なんかもできていたりします。
ここ来るならすぐそこのデンバーステーキ
いくけどな、と思うのですが、当の本人が
そこに案外行っていません。

そこから北に行くと過去にはサイゼリヤ
あった場所に今はセブンイレブンがあったりします。
セブンイレブンは便利ですが、この辺にいくつ
あるんだという状況です。すぐそばに3つもあります。
跡地にはあまり自分の希望通りの店は建たないな
ということを思い知らされる今日この頃です。

いつも急募の特許事務所はブラック

年末から年を開けると1年の中で一番転職が多い時期になります。
求人もこの時期から目ぼしいのが増えてきますね。
独立していて、もう転職などしない自分にとっても、
なんとなく気になって色々目に留まってしまいます。
意外といい求人もあったりするのですよ。

そんな中パテントサロンの記事を見るのですが、
どうしても「急募」という赤い字が目に留まります。
その急募ってどんな意味なのでしょうか。

普通に考えると、急に手が足りなくなって
手早く人員補充を行いたいという意味に理解されます。
想定外の人員補充ということになります。

本来は人員の確保というのは計画的に行う
性質のものであるはずなのです。
ある程度はスタッフに残業で負担を掛けながら、
徐々に人員を補充していくものです。

ただし、人員が急に足りなくなるということは
当然あり得る話なので、そういう場合には
どうしても急募となってしまうのでは
ないかと思われます。が、なんか多い気はしますね。

採用は計画的に、必要な時に必要な人員を、
というのもあるのですが、通年採用というのも
また採用する側のスタンスとしては十分あり得ます。
特許事務所の新卒採用というのは一般的
ではありません。中途採用なので、
採用時期は原則として固定ではありませんし、
時期で人を取るのではなく、取りたい人を
じっくりと構えて採用するというスタンスは
これまたありうるでしょう。

という前置きの上で、常時採用しているのに
なぜかいつも急募ってどういうことなんですかね、
という大きな疑問があります。
急募はあり得ます。通年採用もまたあり得ます。
常時求人を打っていて、通常は急募ではないが、
あるタイミングで急募というのはありうるでしょう。

しかし常時求人を打っていて常に急募、
というのは疑問が残ります。
正直これは訳ありだな、という認識を持っています。

常時採用をしていれば、自分のとこの応募者の水準
がどのレベルなのかというのはある程度分かります。
どうしても人を取りたいなら採用基準は
この辺でということになりますし、
そこを満たさないなら人は取れないのだから
所内的な業務分担を見直す必要が出るでしょう。

どうしても取りたいし、水準も下げられない、
のなら待遇を上げることになります。
基本、待遇を上げて人をとれない
ということはあまりありません。

パテントサロンを見ていると、求人なんだから
自動的に目立つように急募にしているだけ、
という安易なところの方が多いような気もしますが、
常時求人していて、それが常に急募ってのは
言っていることに矛盾があることは間違いありません。

待遇は上げたくない、採用基準は落としたくない、
だから人員の手配が慢性的に不十分なのに、
所内的に業務管理ができていない、
通常はそういうことの結果とみるべきです。

特に業務拡大のため急募というのは
危険極まりありません。
業務というのは人員の増強具合を見ながら
拡大していくものです。
仕事がたくさん入ったから急募というのは
ありそうでほとんどありません。
誰にやってもらうかわからない仕事をそんなに
簡単に大量に発注するものなのでしょうか。

まあ通常は人材の大量流出を埋め合わせるための
急募です。大体人増えていないのでは
ないでしょうか。

そういうのを見ていくと良さげな求人は
ひっそりと出ていることが常である
ということになるのですが、
そういうのに気づくような転職マニアは
求人ではあまりお呼びではなさそうなので、
その辺うまくできているのかもしれません。

法律事務所のデメリット=健康保険が自腹

いきなりなんの反省もないネガティブ記事を繰り返します。
世の中そんなもんです。

一昔前に比べて「特許事務所」に比べて「法律事務所」
の存在感が増しています。いわゆる明細書を書いて
特許を取得するだけの旧来型の仕事から、
幅広い仕事を受けるニーズが広がってきた中で、
隣接職として一番近い弁護士による参入が
増えてきたのですね。

もちろん特許事務所でも幅広い仕事を
受けることができるところは結構多いですが。
やはり組織のベースが弁護士事務所であることから、
大手企業から特許出願のご依頼をまとまって受ける、
という従来型以外の仕事も多いのだと思われます。

経験を求めるうえでそういう方向を転職先として
求めるのはキャリアアップの面で良い面もありますが、
マイナス面もあることも言及いたします。

1)所長の後継者になれない

法律事務所の所長は弁護士です。
ですから当たり前ですよね。もっとも
特許法律事務所の中で出世を目指すというのも
そもそも一般的でもないかもしれませんが。

なお、大手の法律事務所はもれなくパートナー制
ですが、かなりの部分はパートナーの枠は
なくなってしまっているそうですよ。
そこに潜り込める力があるならもう独立すれば?
というくらいの要件が必要なようです。


2)健康保険が自腹

こっちの方が大きいと思われますが、
本来弁護士の就労形態は弁理士とは多くの場合異なります。
しかし弁理士も同様の就業形態が適用されるのです。
一般的に弁護士は、法律事務所との間で個人事業主として
事業契約を結んでいるのだそうです。
とにかく雇用契約ではないということで、
健康保険の半額負担がないということです。

通常の特許事務所は雇用契約なので、協会けんぽ
とかに入って半額を特許事務所が負担します。
法律事務所は国民健康保険に自分で入る
という体制という話を聞きました。
となると年金も同様ですね。

雇用契約ではないのに、勤めているから
被雇用者としての縛りもかかり、
税金対策もできないとの嘆きを聞きます。
それでいて社会保障は個人事業者扱いです。
だから、見かけの年俸よりも手取り金額は
法律事務所の場合は少ないことになります。


もっとも法律事務所とは名ばかりの
弁護士はごくわずかの、実質的な特許事務所
については特許事務所のルールで運営されています。
が、弁護士多数所属の弁護士主導の法律事務所
については、一応こんな感じなんだそうです。