弁理士うめざわブログ

特許事務所の弁理士による、特許事務所業界ブログ

弁理士と士農工商

どうも弁理士ブログ向けの記事ネタが思いつかず、更新が滞っておりました。
モチベーション的に夏だなあと言う感じになってきております。
みなさんも夏休みシーズンをいかがお過ごしでしょうか。

さて、弁理士と一言で言っても、全員立場はフラットではないですよね。
弁理士会の委員会に出れば登録番号が若いと下っ端扱いされます。
まあ委員会は出なければいいだけですが、いろんな見えない上下関係
を感じることがあります。そういうのを士農工商に例えてみたところ、
案外当てはまった気がしたので、そういう記事を書いてみました。

武士の士は当然企業知財部ですね。そういう上下関係を感じるからこそ、
企業知財部に行きたいという方が後を絶ちません。まあ楽だと思われ
ている方が多いのが気になりますが、楽かどうかは職場によります。
あとまあ会社なので、案件処理できればよいというドライな関係
ではありません。とはいえ知財業界ではあるので、単純にメーカー、
というのとは異なり、やっぱりちょっとこっち側な感じがします。

農民は国内特許明細書作成の弁理士ですね。弁理士業界全般の
空気感として、特許明細書を書いてこそ偉い、という風土があります。
もともと知財出身の自分からすると、外に出てみて初めて、
そうなんだという風に感じました。
国内特許明細書担当者って農民だなあと思ったのが本記事の
動機です。ある意味他は後付けではあります。

士農に共通するのは、ある程度相対的に高い地位に当てられていますが、
全般的にそこまで稼ぎは良くありません。もちろん大名や豪農
みたいのはありますが例外です。

後は工商、アウトカーストです。一応区分しては見ましたが、
ちょっと怒られる気がしたので書くのはやめます。
この辺の町人階級の方が儲けの余地は結構多い気はします。
外国担当者等は典型的な例ですね。

特許事務所経営者は?というのはありますが、
そこは大きくなれば別ポジションになります。
士農工商の下があるように、士農工商の上もあります。
皇族とかいろいろありますね。特に実務もせずにフラフラして、
それでも金を持っている人たちは殿上人階級です。
自分もそんな風になりたいですが、今はまだ貧乏暇なしです。

階級関係はふれはじめるとよろしくない感じがありますので
この辺にしますが、単純に稼ぎの良し悪し以外での
上下関係的な空気感が、この業界にはあります。
そしてそういうのが職業選択の根拠となっているのは
確かに感じるところではあります。

ブログを匿名から実名にするときには注意が必要

そういえばもう1月くらいたちましたが、Hagexなんとかいう
ブログを運営していた人が福岡での講演のタイミングを
見計らって刺殺されるという事件が起きました。
事件についてはいろいろ調べてみて、まあこういう経緯だろう、
こういう改善点があるなあなどと色んなことを思いましたが、
そのいくつかある点のうちの1つは、匿名でやっていたブログを、
個人情報をオープンにして活動をし始めたタイミングと言う点です。

名前や写真などの個人情報を公開し、匿名からやめるタイミングって、
結構危ないのですよね。自分の場合ですと、1年たったら
実名公開にするつもりでブログは始めたのですが、
それでも匿名の頃の方が少し気が大きくなった記事が
多かったように思います。

コメント欄は今は閉鎖していますが変な書き込みが増えたのも
そのことですし、わざわざ変なメールを送ってくる人もいました。
あの記事はどうかと直接言われたのも匿名の頃に書いた記事です。
SNS等と異なり、何年も前の記事でも検索に引っかかるので、
色々勘所がつかめないまま書いた記事が微妙な感じに
なることがあります。

匿名時代は気が大きくなっているというのが1つと、
匿名の頃に思うところがあったのが、なんだあいつかと思う
ようになったというのがもう1つです。
今はもう実名顔出しにしてから長いので、ここ数年の記事
等について何かと言うことはまずないのですが、
切り替わりのタイミングと言うのは結構やっかいなのですね。

なんというか、「今がそのタイミング」という認識を持たれるのが
結構事件に関して重要なポイントなのではないかなあと思います。
人が何かを決断するのにしても、合理的な判断基準とかより
「今しかない」という追い込まれ感が行動の引き金になりますよね。

まあだから何を対策するかと言っても何もないのですけど、
匿名解除するタイミングは慎重な方がいいと思います。
まあ暴力的なことはほとんどないでしょうけど、
不愉快なこと程度はいくらでも起こるでしょうから。

会社に在籍している発明者の、会社に帰属しない特許出願について

最近、副業解禁関連の法案についての話題があります。
しかしまあ本業と同様に取り組む副業を推奨します、
という趣旨ではないような気がします。
一企業が複数の事業部を有する、というのなら
様々な効果が期待されますが、1個人で限られた
時間の間に複数の業務をこなすのは、
本業によほど余裕があるというのでなければ、
基本的には非効率です。

一方で、弊所のお客様の中には、会社に努めながら、
起業準備をされている方が結構います。
そんな中で特許出願・商標登録をしたい、という
ご依頼をお受けすることがあります。
お話をお聞きしていると、本業の存在による
制約を気にされている場合があります。
おそらく副業解禁と言うのは、こういうケースでも
安心して起業に取り組めるようにするためでは
ないのかな等と思っています。

ただまあ在籍しながら起業準備と言うのは、
特許事務所に在籍しながら独立準備、というくらいに
もちろん気まずいものであります。
公開公報に掲載される前までに起業する、
と言うのが時期的な目安になりそうです。
まあ公開公報が見つかることも珍しいですが。
あとは職務発明の規定に該当しないかとか、
帰属中特有の問題の相談をお受けすることもあります。

やっぱりスパッとやめてから取り組む、のがすっきり
するのですが、辞めた後の収入がどうしても不安です。
私も在職中にできるだけ独立準備はしました。
蓄えを減らさないためにも在職中にできることを、
と言うことは結構重要な観点です。

まあ自分がそう思っているだけで、政府の本音は
全く別のところにあるのかもしれませんが、
少なくともそういうニーズもある話ではないかなと
そんな気がしています。

弁理士業務の中途受任や代理人変更時のトラブル

独立して結構たちましたので、既に出願された案件の
中途受任案件数はそれなりの数になりました。
お客様自身が出願されたり、又は他の弁理士を介して
出願された案件を中途受任することがあります。
そういう時にトラブルがないかは不安材料ですね。

トラブルと言っても別にもめ事がある訳ではありません。
しかし、想定外の面倒が発生するということがあります。
一番困ったなあと言うのが、ハンコが違うというものですね。
お客様自身で出願して、勝手が違うということで中途受任
するときに、自己出願の場合には、自身のハンコを
捺印されています。

そこから弊所で中途受任する場合には、委任状と共に
代理人受任届を提出することになります。
そこで委任状に捺印してくださいと言って押されたハンコが、
特許庁届け出時のハンコと異なるというものです。

厄介なのが、こちらからすると、どのハンコが最初に捺印
されていたかを確認するすべがないというものです。
特許庁からすれば、当然のことながら当初なされた
印鑑情報は秘密情報です。その時点で出願人との
関係性が証明されていない者に知らせる訳には行きません。

お客様には最初になされた印鑑を捺印してください
と伝えますが、どうやらどの印鑑かを忘れてしまったらしく、
特許庁に提出してから、印鑑が適正でない
という通知が来てしまいます。

どの書類にどのハンコを捺印したかは、自分で手続きをした
のであれば、自身で管理しないとそもそも手続きできない
と思うのですけどね。

通常出願から代理人に依頼する場合には印鑑が省略されるので、
その点の面倒はなくなります。
ただし、代理人変更時にも印鑑が提出されていることはあります。
出願、審査請求、補正書意見書、設定登録だけなら、
印鑑の提出は必要ないのですが、権利の移転、表示変更などで、
委任状および印鑑が提出されていることがあります。
その場合に、うっかりそのまま提出して特許庁から
印鑑が違うと指摘されることがあります。
そういうときは、また色々面倒が起こるのですね。

まあ皆さん、特許庁に手続した印鑑はどれかを管理しておきましょう。
でないと後々面倒です。

会社を辞めてどうするかという議論

知財関係者のキャリア形成的な話は何度かしているのですが、
知財業界外の人と会うことが増えるにつれて、一般論としての
人生設計的なことを総論的に語りたい気持ちで書くことにしました。

20代とか30前後の年齢というのは、若者ですので上の人からの
色んな制約がかけられやすい立場にあり、その結果として職場が
非常にしんどい、ということになることが多いです。
少なくとも自分はそうでしたし、そういう理由で職を転々としました。

それでどうするか、となったときに会社を辞めることに
自分は賛成です。そういう意見に対して自己正当化する
高齢の所属長たちは世の中にたくさんいますが、
ろくなものではありません。

問題はやめてどうするか、って話ですが、
辞める前に考えるパターンと、辞めてから考えるパターン、
があります。30前半までだったらとりあえず
辞めてしまってよいと思います。なんとかなります。

辞めた後、同じように転職して次も同じように辞める、
というのが最悪な選択です。そういうことを繰り返して、
行けるところがどんどん減っていった友人もいます。
もちろん年齢を重ね、キャリアを重ねるというのは、
自分の選択肢を減らしていくことでもありますが、
選択肢が追い詰められていくのは厳しいです。

それを避けるために一番一般的なのは、キャリアを一貫させて、
転職を繰り返しても、ステップアップしていくことです。
まあステップアップするとは限りませんが、
一からやり直し、というのは停滞になりがちですね。

なお、世の中には起業という選択肢もあります。
全く新しい選択肢のようにも思えますが、
これは起業という新たなキャリアが存在する、
というのが正しいように思います。
知財業界が長いと業界知識や立ち回りを覚えるように、
ベンチャー界隈もまた独特の業界知識や立ち回りがあります。
結局早く飛び込んで実地で覚えた方が良いことに
変わりはありません。

そういう点だと、知財業界の人は勉強をしてキャリアを
高めていくことが趣味のような人が多いです。
何か目標を決めて、それを達成したら次の目標、という風に
ステップアップしていくタイプの人が多いです。
ただ、それをどう生かしていくかという観点が抜けている
ことが多いので、そこをどうしていくかです。

年齢が上がったときに一発逆転というのは世の中
ありそうでそんなにありません。自分の場合は独立して
しょぼいながらもなんとかなったなあというのがありますが、
それも結局過去の蓄積を生かしてということになります。

なので、やることなければとりあえず勉強しておく、
というのはそれなりにありかなあという気はします。
ただその勉強の目的ははっきりしている方が良いので、
実践を繰り返しながら自己鍛錬していくのが一番良いでしょう。