弁理士うめざわブログ

特許事務所の弁理士による、特許事務所業界ブログ

平成30年度弁理士試験論文式筆記試験(必須科目)問題及び論点

弁理士試験、必須科目の論文試験問題が公表になりました。
昨日は試験日だったようです。受験生の方は暑い中ご苦労様でした。

http://www.jpo.go.jp/torikumi/benrishi/benrishi2/h30benrisi_ronten.htm

特許法が事例2つ、意匠法、商標法は例によって、趣旨の小問+事例1つ
という例年通りの組み合わせです。

物議を醸したマドプロの問題ですが、やったことないと考えもしないよな、
という感想です。受験機関はこういうの教えるのでしょうか。
自分はまあマドプロ外内を受験生当時の時点でも何回か
やったことがあったので、こういうのって相手国から手続きできるの?
等ということは調べたりしました。
一度出題しないとあまり周知事項にもならないですよね。

なお、問題1も、今手持ちで関連案件があります。進めないと。

特許法、意匠法もざっと見ましたが、私が独立してからの数年で、
何らかの形で検討を必要とした事項が含まれています。
そういう意味で、試験内容は再び実務者優位に振れた感じを受けます。

この辺は年度ごとに揺れ動く系統があり、年度によっては実務者を
目の敵にしていた年もあるのですね。要するに何も考えなければ
正解に至るものの、実務的な事項を知っていたら、そこで落とし穴に
嵌るように設計されている年もあります。
まあその辺出題者側の気まぐれですね。

毎年のことですが、問題は出題された問題そのままで、
まあ良いのですが、一緒に添付されている「論点」については、
何か説明されているようで何も説明されておらず、
「なめとんのか」と思います。

尊敬される弁理士とは

別のところで、IT業界では家入一真さんのような尊敬される人がいて、
影響力がある、といった議論が上がったのですが、
弁理士業界で尊敬される人ってのはどんな人がいるのかな、
ということを考えたときに、ちょっとお寒い状態である
ということに気づきました。

なんとなく、尊敬される弁理士というときに、
我らが業界では、実務能力、対人能力、マネージメント能力、
等の能力面での高さをイメージすることが多いのですが、
そういう人が尊敬されているかというと、
そういう人は尊敬される弁理士のイメージに上がらないですね。

尊敬される弁理士の前に、尊敬される人物とはどんな人なのか、
というと、そこはもしかすると普遍的な真理があるかもしれません。

尊敬される人というのは、数多くの人に対して
与えることができる人なのではないでしょうか。
確かに尊敬される人というのは、数多くの人に対して、
多くのことを与えている人を言うような気がします。

自分はこんなに偉いんだぞ、だから尊敬に値するだろ?
という人をたまに目にする機会があったりしますが、
そういう人というのを尊敬するかというと、
非常に残念な見解を持たざるを得ません。

お金を儲けていても、それだけでは尊敬される人になりません。
尊敬される人というのは与える人です。
自分の事務所のスタッフの待遇が良くない特許事務所については、
そういう情報は結局漏れていきますので、
どんなに羽振りが良くても尊敬はされないでしょう。
ましてや人がどんどん辞めていく特許事務所の所長を
尊敬しようがありません。

弁理士会の重鎮については、確かに面倒な仕事を引き受けている
かもしれません。しかしながら一般の弁理士から見ると、
非常に無駄な作業を膨らませて、無駄に骨を折っている
だけにしか見えません。少なくとも自分たちにとって
役に立っているというイメージが全然わかないのです。
だとすると、どんなに頑張っても尊敬の対象になりませんね。

考えられるとすれば、丸島元専務とか、
そういう企業側の人材ということになるでしょうか。
特許事務所の弁理士で尊敬されるには、
そこで働きたいという感じになる必要があり、
スタッフの待遇が良くなくてはありません。
そういう特許事務所が全く思い浮かばないという現状があります。
あるとすれば一匹狼系ですが、どうしても知名度は下がりますね。

まあ仕組み的に弁理士が尊敬されるのは難しいと思います。
尊敬されたい人は弁理士を目指さない方がいいかもしれません。
外から見て弁理士の魅力が感じられないのは、
尊敬される弁理士像が見えてこないのも一因でしょう。

士業パートの時給2000円超えない問題

弁理士も、いくつかある士業と呼ばれる業種の1つとして数えられます。
八士業ある中で、一応漏れずにカウントしてもらえる立場です。
この辺の士業では、まずは1人事務所で独立して、徐々に拡大して
スタッフを拡充していくパターン、特に拡大しないパターン、
両方ともみられます。

いずれにしても雑用は発生しますし、
事務仕事もスタッフに任せたい需要が発生します。
そんなときにパートタイムスタッフが一番雇いやすいです。
自分じゃないといけない仕事も多いですし、
どう切り分けるかも結構大きい問題です。

さて、フルタイムではなくパートタイムの場合、
時給をどうするかというと、ざっくり言って、
1500-1700円くらいが一番多いかなあと思います。
それより安い求人も見かけたりしますが、多分集まってないでしょう。
未経験ならわからなくもないですが、ある程度任せられるくらい
の方で、スーパーのレジ打ちと同じくらいってどういうことなの、
というのが一般的な感想でしょう。

実際のところどのくらい出しますか?ということを、
他の弁理士や他の士業の方たちと話したりすることもあります。
話聞いている限り、皆さん思ったより渋いなあというのが感想です。
自分が1時間当たりいくら稼いでいるかを思えば、
業務を切り離せるなら、その差分は直ちに利益になる訳です。
どんどん任せるのが利益になりますし、任せられる方には
相応の待遇を渡す方が良いのではないかなと思います。

率直に言って、時給2000円が一つの分岐点となっているようで、
パートタイムにはこの数字を渡したくないという方が多いようです。

ある社労士さんが、能力的によくできるパートさんがいて、
能力が高いから時給を上げてくれと言ってきた、
でもパートで時給2000円とかありえない、
という話をしていました。
その方は結局辞めたそうなのですが、その社労士さんは、
仕事が多くて回らないと申しておりました。
正直意味が分からないなと思いました。

社労士さん以外でも、弁理士やその他の士業でも
同様の見解を持ち、それで仕事が多忙になっている方の話を聞きます。
まあ色々だなあと思いますが、どうやらこの辺が心理的な分岐点
になっているとそういう感じになるようです。
パートタイムの時給が上がりにくいわけですね。

弁理士試験短答受験者統計・短答合格者統計(平成30年度)

先日合格者が発表された弁理士試験、短答試験の、
弁理士試験短答受験者統計、弁理士試験短答合格者統計が出ました。
別々に公表されていたと思ったのですが、
こちらが見落としているのでなければ、
受験者統計と、合格者統計が同じタイミングでの発表となりました。

http://www.jpo.go.jp/oshirase/benrishi/shiken/h30toukei/index.html

弁理士試験短答受験者統計
http://www.jpo.go.jp/oshirase/benrishi/shiken/h30toukei/pdf/h30_tan_jukensha.pdf

弁理士試験短答合格者統計
http://www.jpo.go.jp/oshirase/benrishi/shiken/h30toukei/pdf/h30_tan_goukaku.pdf

      H25    H26     H27       H28     H29   H30
受験者数  4734    4674    4278    3586    3213  3078

志願者数から見ても分かる通り、受験者数も減っていますね。
一方で合格者数は、2017年が272人であったのに対して、なんと585人と倍増しました。

去年が絞りすぎと言われたのに対して、今年は増やし過ぎで
あまりに安定してないのではないかとの批判があります。
ボーダー39点にこだわらず、柔軟性を持たせてはという意見もあります。
しかし情報の格差を減らしたい当局の意向もありますし、
いろんな面があります。

短答合格者数は倍増しましたが、初回合格者数は1.6倍に留まっています。
他は2.2倍以上になってますので、去年受からなかった人が今年受かった、
という計算になります。
職業別でみても、特許事務所勤務者の数が、会社員よりも多いです。
傾向としては、特許事務所勤務者の方が、受験回数が多めな印象です。
短答合格者数が増えたので、最終的な合格者の数も増えるでしょう。

出題側は、受験生全体のレベルはこれくらいで、これくらいの難易度なら
合格点39点を超えるのはこれくらいの人数になるだろう、
という読み筋を基に出題内容を決めてくるでしょう。

ただ母集団のレベル変動もありますし(今後の読みとしては下がってく方向)、
合格レベル固定で合格者数が急激に下がっていくようだと、
難易度調整も必要になってくるでしょう。
なので、今後もこういう年ごとの大変動は頻繁に起こりそうです。

スタッフとして苦境を経た弁理士の運営がホワイトとは限らない

自分の転職先がブラック特許事務所なのか、ホワイト特許事務所なのか、
というのは転職の際に非常に気になるところがありますね。
「こんなはずじゃなかった」と、後で後悔することがないように、
入念な情報収集をしてから転職に挑みたいものです。

そんな中、どんな転職先を選択するか。
まあ大手特許事務所を選んでおけば、「大凶」を選ぶことはないでしょう。
ただそこで出世するかというと、いろいろ難しいものもあります。

弁理士資格まで取って、大手の特許事務所なんか勤めたくない、
という人は、元大企業出身者を中心に時々見られます。
自分も大企業出身者なので、そういう見方に近かったです。
そんな人がどんな事務所を選択するか、というと、
所長のパーソナリティに注目する方が多いようです。

所長が若い特許事務所が増えています。
自ら独立して事務所を立ち上げて大きくしていくと、
そういう特許事務所の求人も出てきます。
そんな特許事務所は応募先として魅力的なのか?
事務所としてもまだ若いことも、未知数な要素を増しますね。

応募して、所長が自分と同じ年だったり、所長の方が若かったり
するケースがあります。所長がその年齢関係であること
を嫌い、自分より若い人を希望されることも多いです。
年齢の上下は依然として気を遣う要素であります。
気にする人しない人、人によって分かれますが。

問題は応募者側から見て魅力的かどうかなのですが、
実際のところ、私のところにも数多の情報が入ってきており、
おすすめな事務所もありますが、苦い顔を押えられなくなる
ような話もちらほら入ってきております。

長所としてはある程度決断が早く、ITをはじめとした
新しい試みに対して積極的な環境が多い点があります。

短所としてはこれは人によるのが現実ですが、所長が
人として未熟と思われるケースを時々耳にします。
まあ年取っていながらさらに人として未熟、なんてケースも
ありますので、そんな救いのない話もあったりします。

自分は苦労をしてここまでたどり着いたけど、
別にスタッフに還元する気はないよ、という人は少なくありません。
いろんな経験をしてきて、みんなの気持ちも分かりそうに見えて、
その理解力を陰湿な手口に利用する人も話もなくはないでしょう。

いろんな話を聞くにつれて、色々だなあと思いますので、
表面的な雰囲気に踊らされず、実質的に良い環境を探すのが
一番良いのではないかなと思います。