弁理士うめざわブログ

特許事務所の弁理士による、特許事務所業界ブログ

どうしてダメな社外弁理士を使うのか?まとめ

さて先週(9/15)の続きです。
「どうしてダメな社外弁理士を使うのか?1」の続きから。
http://patintl.hatenablog.com/entry/2014/09/15/161008

前回の記事で少し気になったのが、
「その負担に応えるだけの決定的な何かを提供しないとダメです」
なんて書いてしまったのが、何かの便益を与えるという
ニュアンスに伝わってしまったりしていないかということなんですが、

金品を与えるのは当然、度を過ぎる飲み食いやゴルフ、女性のお店の
接待みたいなものへの監視は厳しくなっていますし、
知財の人はほとんど理系ということもありあまりそういうことを
要求する風土はないように思われます。

知財部の人は結局会社員なので、何だかんだいっても社内で
自分や部署の人の仕事が、全社的にまたは上層部に評価される、
というのが最大の恩恵ということになります。
1つ1つの仕事そのものだけでそこまで大きな貢献に結びつくというのは
難しいというかほとんど無理ですが、最終的な目的はそこです。

特許事務所の弁理士としては月並みに「いい仕事をする」という形でしか
クライアントに貢献することは出来ないんですが、一方で会社の側から
知財に権限が十分に移されており、かつ他部門も協力的だったりすると、
特許事務所の人間にも分かりやすいロジックで組織が
運営されることになると思います。
知財部が、外部弁理士の明細書、中間処理の応答能力を精細に評価し、
評価が高い弁理士には単価を高く、そうでない相手の単価は下げ、
場合によってはふるい落とします。価格設定も高すぎず安すぎず。

新規の取引先の開拓もやったりしますね。
知財部の理想主義がきちんと機能しているケースです。

けど実際そううまくいくかというと、他部門との関係がそこまで良好と
いうことも多くはなく、開発から「あいつら何やってんの?」とか
「こっちの仕事をじゃますんな」とかそういう扱いも少なくないでしょう。
予算を多く取ったりすると、「一体何に使ってるんだ」ということもあります。
そもそも一朝一夕に結果の出る仕事ではないですよね。
自分たちとしてはうまくやれているつもりでも、外から分かる
アウトプットにするというのはなかなか難しい話であります。

そういう社内的なロジックとの関係性から知財部の理想主義というのが
磨耗してくるということも結構多いんじゃないかなという気がします。
その結果として、知財のやることに他部門から根拠を求められたり、
余計な仕事を振られたりとか多いのではないでしょうか。

いい明細書=いい特許ではない、なんてみんな聞き飽きているでしょう。
そういう品質管理が自分たちの仕事の実績につながらないという
現実を知ったとき、知財部の仕事はどこにフォーカスしていくか
ということになります。
開発の人も開発の人なりに特許で問題を抱える事態になったりして、
そのときに知財の人と社内の人間同士で共有する問題意識は
特許事務所の人間が想像するものとは全く違うロジックで
あることも多いのではないかと思います。

外部弁理士が高く評価されるとしたらそこに何らかの答えを提供する場合であって、
明細書の品質とか価格とか、そんなのは小さい話であると考えます。

明細書の品質や価格を度外視したときに、自分たちの仕事は
競合よりもなにが優れているでしょうか。そこに差がないとすれば、
代理人の変更を訴える際に説得力がないというのが結論です。

実際のとこ、クライアントから突出して評価の高い弁理士・特許技術者って
明細書の品質で評価されてるか?っていうとそうではないと思うんですね。

Q「どうしてダメな社外弁理士を使うのか?」
A「どうせお前らそんなに差なんてないだろ」

弁理士としては、自分が見ている世界を全てだと思ってはいけないという話でした。