弁理士・特許技術者が駆け出しの頃に教わるべき事項
特許明細書を書く上で、必要なことは多岐にわたるのですが、
最初に何から習得すべきかということは、新人の時代が
遠い昔になると、それが何であったか忘れてしまいます。
ともかく、知財の職場では、特許事務所でも知財部でも、
最初にいきなり案件を渡されてOJTということになります。
それは多分どこでも変わらないのでしょう。
ちなみに自分は電気系ですので、そっちの話題になります。
多分、化学バイオ系の方には違和感のある話になります。
自分の場合は最初は企業知財で、拒絶理由通知の対応、
いわゆる中間処理から入りました。
それから、旧異議申し立てを扱うことになり、
それから明細書作成を担当することになりました。
そういう訳で、最初から特許請求の範囲を書いています。
中間処理でなく明細書から入る場合でも、
クレームを書くことから入ることが多いでしょう。
特許事務所に転職した後は、一応特許事務所未経験という
扱われ方はしましたが、一応やっているので、
完全未経験のような戸惑いはなく、一応自分なりの
スタンスで案件処理をやっていました。
まあとにかく、特許請求の範囲(クレーム)を書く、
という指導が最初からずっと付きまとうことになります。
当然片っ端なら直されながら、少しずつ身につけていく
修業期間から始まることになります。
明細書本文の方もサポート要件や文章を正確に書くこと、
整合性などの指導がたくさん入ります。
まあいろいろあるのですが、クレームの指導について
少し思うことがあります。
クレームを書くとき、広すぎず狭すぎず、適切に書く
ということは、どれだけ経験を積んでも難しいです。
そこで指導が入るのですが、駆け出しの頃に
いきなり権利範囲を広く書かせる指導をするのは
混乱させるのではないかという気がします。
広いクレームというと、漠然としたクレーム
になってしまいがちです。
例えば「机」というクレームを書いたとします。
これは非常に広いクレームですね。
けど何も特徴としての発明特定事項がありません。
クレームを書く際、必要な限定事項を網羅した段階から、
枝葉を落としていくという段階を経ると思うので、
最初に狭いクレームを書けないといけないと思うのです。
「あ、これはいらないな」と思った部分を削りつつ、
実施例の中に放り込み、中にはサブクレームに入れる
ということになっていくと思います。
ですので、発明特定事項を見出す訓練を積むことが
最初に求められることだと思うので、
適切な限定ができるように教えることが
必要だと思っています。
私は多くの職場に所属していろんな方に教わりましたが、
権利範囲を広げることばっかりで、どう限定するか、
については、これといった指導はなかったように思います。
ということは、多くの実務家の方にとっても
そうなのではないかという気がします。
クレームの狭さは確かになんとなく目につくので、
確かに指摘したくはなるのですね。
しかしよく見ると、まあその限定はあっても
大勢に問題はないか…となったりします。
まあ広い方がよいですが、人のをチェックするときに
そういうことまで見ているときりがなくなります。
一方で発明の本質を見つけ出して、この概念が必須の
事項ではないか?ということを抽出していくのは
それなりに内容を理解していく必要があります。
そういう面倒なことは特許事務所や知財担当者は
あまりやらなかったりしますね。
「目につきやすい部分をなんとなく指摘する」
レビュー行為にありがちな安易さが横行したりします。
どんな世界でも、駆け出しの人間が最初に身につけること
と指導者がなんとなく固執すべきことというのは、
結構ずれるということはありがちかと思います。
まあそういう部分も含めて最初は大変ということです。