独立後の弁理士業務は楽勝と思われている風潮
特許事務所の独立開業についてどう思うかという点
については、独立は難しいと思われているようです。
その理由は、仕事を取ってくるのが難しいから。
ただ、取ってくるのは難しいけど、
仕事そのものは楽勝と思われているような気がします。
基本、隣の芝生ですから、実像を想像できずに、
実体と違った想像をすることは多々ありますが、
多分そこは逆なのではないかと思うのです。
まあ楽勝な仕事を集めてくるのは非常に難しいです。
さすがにそこは甘くないです。
ただ、仕事を集めてくることが非常に困難か、
というとそこまでではないように思われます。
世の中には引き取り手のない仕事、とっかかりも
つかめないような仕事というのは結構あふれています。
楽な仕事というのは、どこかで引っかかりますから、
なかなか自分まで流れてくることは少ないです。
が、人を選ぶような仕事であれば、アンテナを高く
しておけば、そこで仕事は回ってきます。
実情としては、仕事をこなす方が難しいです。
あと、単に特許出願する、商標登録出願する、
というだけでも、事務処理なんかも発生します。
業務が定型的になるほど、価格への圧力も高くなります。
効率よくこなすことも求められるとともに、
正確に手続しなくてはなりません。
こういうのは当たり前の話に聞こえるかもしれませんが、
ある程度組織が大きくなって業務フローがあり、
スタッフ全体にその仕事の慣れがある状況だからこそ、
当たり前にこなせているのであって、
その当たり前の環境というのは
最初からあるわけではありません。
例えば勤務弁理士であれば、1か月6件明細書を書いて、
中間処理なども、と考えるかもしれませんが、
それは業務フローの中のごく一部をやっているだけに
すぎないのです。独立後にそんな案件処理はできません。
勤務時代はいかに全体をやっていなかったか、
というのは独立してみてから気づくことだと思います。
まあやってみなければわからない、というありきたりな
話になってしまうのではありますが、仕事が入ってさえ
すれば、あとはウハウハみたいに思っている人が
案外多いようで、取ってくるまでも大事ですが、
そこできちんとこなす体制つくりはもっと大事です。
営業って特殊な話のように思われますが、
要するに、「うちに任せればきちんと仕事をこなしますよ」
という安心感を与えることに帰結します。
しかし最初は、きちんと仕事をしたら効率よくこなせません。
そこの部分というのが、整備された環境で働いている
人たちには、なかなか理解できない部分のようです。
まあ自分も勤めていた当時は、実務自体は楽勝でしたし。
得てして自分がやっていない部分は楽勝だと思ってしまう
ところはあります。企業知財部の人間からすれば、
明細書作成なんて簡単なことをなんで特許事務所の人間は
簡単にできないのか?なんて思ってますし、
事務所サイドでは、企業側は楽な仕事をしている、
と思ってる人が多く、
明細書書きからすれば、特許出願以外は
雑務だと思っている人が結構多いように思います。
全体を一手にやるようになって初めて、
「大変だなあ」になるとともに、
それをきちんとやれるのであれば、
仕事は依頼をされるようになってくる、
というものだと思っています。
まあ「きちんと」と「効率よく」の併存は
一朝一夕にはいかないとそんな話です。