特許事務所には厳しいことを言うことが指導だと勘違いしている人が多い
特許事務所の採用については、一時期就職氷河期が
ピークを極めた時期を除いては慢性的に人材が不足しています。
どこの特許事務所も安月給でこき使える人材は不足しています。
ただまあ安月給と言っても、その人材供給源となるメーカーも
大概ですので、給料については五十歩百歩ということで、
理不尽な上司、理不尽な組織運営に愛想をつかして転身する
ということは当然にあり得ますし、そういう場合の受け皿として
特許事務所これまで長い間機能してきました。
そういう意味で基本的に消極的な理由で選ばれることが
多い我が業界ですが、せっかく晴れてドロップアウトをして
押し出されてくれた貴重な人材ですので、
それなりに搾り取らなくてはなりません。
エスポワール号の乗り手は多くはないのです。
一方、世の中安月給でも居心地が良ければそれはそれで
よいのではないかという価値観が存在します。
そういう価値観に応えてくれる特許事務所も存在します。
ただ多数派ではないようで、なぜそういうことになってしまうのか。
現在はメーカーの要求の厳しさも理由の1つには含まれますが、
やっぱりこの仕事、ある程度ものになるまでは時間がかかります。
時間をかけてものにしていけば、飼いならされた野心の少ない
この業界人は案外そんなには辞めません。
なので育てるメリットはそれなりにはあるのかな、
とも思われますが、基本的にはどこも育てきれないようなのですね。
なぜ育てられないかというと、人を育てるというのは、
実務とは独立したスキルが存在するのですね。
学習指導なんかでは確立していると思われますが、
知財スキルとは全く毛色が異なるものでしょう。
基本的には、できることは任せる、できないことはやらせない、
やらせてみたらやれそうなことを注意深く見ながら、
ある程度手取り足取り教えていく、という感じになるのでは
ないでしょうか。ですがまあ、そんなことやってられないのが1つと、
そういうノウハウが共有されていないことから、
とりあえず崖から突き落としつつ、随時鞭を打つ
というのがこの業界の伝統的な教育手法でしょう。
もちろんそんなのでは人が辞めてしまうので、
いかに低品質の仕事を客に納得させるかというスキル
により大規模化に成功した特許事務所も存在します。
現場は激怒しているのに対して、上を篭絡するとか
いろんな方法があります。客観的に指摘しづらいところで
手を抜くとかいろんな技があります。
今の若い人は昔以上に厳しいことを言われるのに
耐えられなくなっていると言われています。
厳しいことを言うのが指導と思っている人は
今なお減らないですが、脱却していかないと、
組織としては維持していくことは難しいでしょうね。
人材育成も特許事務所の重要な課題であることは
昔からの課題ですが、職種的にそういうのが得意な人は
どうも多くはないようで、何も進歩してはないように思えます。