知的財産とコミュニケーション戦略の時代
近年コンテンツの取り扱われ方が大きく変わり始めてきています。
デジタルコンテンツは、コピーされやすい性質があり、
違法コピーとの戦いに歴史があります。
ゲームソフトなんて、ファミコン登場以前からコピーの問題は
ありましたし、ファミコン自体も違法コピーを想定して、
ROMカセットに執着したという経緯があります。
次に上がるのが音楽CDです。昔はCDではなくアナログレコードであり、
そしてカセットテープが売られていました。
これらのアナログ音源から録音することによりコピーをする
ことが多かったのですが、音質が劣化するというのが
原版を買う動機となっていました。
アナログデータがデジタルデータに移行する過程で、
違法コピーも、それに伴って容易になってきました。
それも当然で、コピーを量産しやすい媒体として
CDが登場したのですから、違法コピーも当然容易になります。
媒体に定着している限りにおいては、まだコピーがされても
利益をプールすることはできましたが、デジタルにて取引
される時代では、妨げることが益々困難になってきます。
そして、漫画村というものが近年問題となってきていて、
今まで違法コピー問題が無縁だった出版業界にも
その波が到達するようになってきました。
違法コピーが氾濫することにより、原版の販売者が損失を
被る、というのは、特に知的財産を取り扱う弁理士にとっては
容易に理解可能な理屈であるだけでなく、
共に戦っていかなくてはならない問題ではあります。
しかしその一方で、知的財産権の行使だけでどこまで妨げられるか、
というとそこにも限界があることも業界人にとっては
周知のことであると思います。
こうやって違法コピーが氾濫する時代に、一体何が生き残っているのか、
というのは興味深い点があります。
私も所属していたゲーム業界は、いち早くネットワーク対応が進みました。
2000年以前からオンラインゲームというのは登場しており、
その後のブームにより、オンラインゲームが大きな収益源となっていました。
更に今、スマホでゲームをするのが一般的になっています。
プラットフォームの管理による、違法コピーの排除を第一の線としながら、
ネットワーク接続を介して、正規品のみアクセスおよびダウンロード可能、
という環境により、違法コピー品の入ってくる余地をなくしています。
音楽業界はと言うと、未だ混乱のさなかにいるようです。
JASRACの迷走は、レコード会社等にとっての利益確保の困難性も
背景にあるような気がします。
オリコンチャート上位は、ジャニーズAKB系が占拠して久しいです。
これは裏を返すと、ファンとアイドルの間の親密性により売り上げが
確保されているということである、音楽商品そのものに魅力があるものは
むしろ違法コピーにより排除され、アイドルへのロイヤルティー
として購入される商品が勝ってきている傾向にあります。
両者に共通することは、販売元と消費者の関係性が、
売り上げ確保の鍵になってきていることを意味します。
最近問題となっている漫画村の問題についてそれを当てはめると、
単に漫画そのものの面白さを追求する以上に、ファンとの関係性を
重視することで伸びてきている漫画の作家も出てきています。
ツイッターでつながる例もありますし、コミケなどで、
もう十分プロと言えるほどの売り上げを確保している人も多いようです。
プラットフォームが強くならないと、完成度の高いコンテンツの制作は
安心してできないですし、その点で戦略的なコミュニケーションが
何より重要な時代になってきたというように思います。
本当は別の話を書こうとしたのですが、
前提の話をまとめただけで長くなってしまいました。
まあ今はそういう時代背景です。